
自己破産手続きでは、裁判所に陳述書を提出する必要があります。今回は、陳述書の書き方についてご紹介していきます。
目次
自己破産の陳述書とは?
陳述書とは、裁判所に”「私は自己破産をする必要がある」という証拠”のかわりに提出するものです。
この陳述書に書く内容は、資産額・借金の詳細・同居の家族構成・仕事と収入・ギャンブルの経験などを書きます。

自己破産を弁護士に依頼した場合、弁護士が用意した陳述書の用紙に記入するケースもあります。各都道府県の裁判所で、陳述書の書式が違ってきます。
陳述書の書き方は?
陳述書の書式をパッと見ても、「これは、どこまでの内容を書けばいいんだろう?」と思いますよね?
陳述書は裁判所に提出する書類のため、正確な情報を記入する必要があります。うろ覚えな期日などを書いて、裁判官から質問をされたときにあいまいな返答をすると、信用を失うため注意しましょう。
書式と各項目についての簡単な説明を入れましたので、参考にしてください。
陳述書の書式と項目
陳述書第1 身上関係について
自己破産陳述書2ページ目
1-1.負債額・債権者人数
借金の総額と債権者の人数を記入します。
1-2.資産総額
申立人の資産の総額を記入します。
※家族の名義の資産については、弁護士に確認してみましょう。
1-3.最終学歴
最終学歴は、中退・卒業した学校を記入
1-4.現在までの破産手続き・個人再生手続きについて
今まで、破産手続き・個人再生がある場合は、期日・免責決定の有無を記入
1-5.同居または別居の家族
現在、一緒に暮らしている人(同居人)と家計を同じくしている別居の家族を記入
※家計を別にしている、別居の家族は記入する必要はありません。
自己破産陳述書3ページ目
1-6.職歴(過去10年間)
過去10年間の職歴を古い順から記入
自己破産陳述書4ページ目
1-7.住居の状況
例1:持ち家・父親の氏名・続柄(父)
例2:賃貸・兄の氏名・続柄(兄)
※例1.2.は本人名義でない場合です。
1-8.生活保護について
生活保護を受給中か、申請をしているかを記入
1-9.(仮)差し押えの有無
債権者によって、差し押さえをされているものがある場合に記入
1-10.結婚歴
結婚歴がある場合は、すべて記入
第2:破産申立に至った経緯
自己破産陳述書5ページ目
2-1.債務増加の原因
自己破産をすることになった理由に当てはまるものにチェックを入れる
あてはまる項目がなけれは、その他に記入
2-2.返済状況
- 債権者と返済について話し合いを持ったことがある場合に期日・債権者名・結果を記入
- 借金の返済のための借入をするようになった時期
- 借金を完済することが無理だと思った時期
- 最後に返済した期日と債権者名
- 借金の利息分だけの返済または、1度も返済をしていない債権者を記入(債権者一覧表に記入している番号も記入します)
- 本来、毎月支払うべき金額(すべての債権者に毎月返済していくべき合計金額を記入)
自己破産陳述書6~7ページ目
2-3.最初に借金をした時期・原因・事情・今日に至るまでの経過に関する陳述
メモ!
- 最初に、借金をした期日と原因
- どうして自己破産するまでになったのか
- 返済するための努力などをしたのか
- その結果、現在はどのような暮らしをしているか
これらをできるだけ簡潔に分かりやすく書きましょう。
自己破産陳述書8ページ目上部
2-4.店や事業を営んでいるか申立ての前3年以内に営んでいた場合
過去3年以内に事業を営んでいた場合は、個人事業主用の陳述書の記入も必要になります。
個人事業主用の陳述書3ページで構成されていて、難しくはありません。それぞれの設問通りに記入すればOKです。
【関連リンク】陳述書(個人事業主用)
第3:その他の事項について
自己破産陳述書8ページ目
3-1.過去10年以内に買った車(古いものから順に記入)
過去10年以内に購入した車で、現在手元にあるもの・2年以内に売却したものを記入
3-2.過去5年以内に分割で10万円以上の物品(車以外)を購入したこと
過去5年以内で、分割で10万円以上のものを購入した場合に記入(現金で一括購入は記入する必要はありません)
例
品名:パソコン
購入日:2013年5月1日
購入価格:118,000円
2015年4月16日に売却
自己破産陳述書9ページ目
3-3.パチンコ・競輪競馬競艇・宝くじ・麻雀等ギャンブルの経験
経験のあるものにチェックを記入
3-4.飲食店での飲酒飲食
月に5万円以上を飲酒飲食に使っていた場合に記入
3-5.氏名・収入・他からの債務額等について事実と異なる申告をして借り入れたり商品を購入したことの有無
事実ではない虚偽の身分や収入を申告して借入・物品購入をした場合に記入

このように、陳述書を書くために事前に調べておく項目があるため、書く前に必要書類を揃えておく必要があります。
陳述書を書く前に調べておくことは?
陳述書を書く前に、資産や借金の詳細調べておくことがあります。
1.資産の総額を計算するために必要なもの
メモ!
- 車の評価額(ローンの完済の有無に関わらず必要)
- 不動産の評価額(住宅ローンの完成に関わらず必要)
- 宝飾品・ブランド品・美術品・生命保険の解約返戻金などの評価額

その他に評価額が20万円以上になりそうなものは、見積をとりましょう。
2.借金の総額や債権者数を把握計算するために必要なもの
- 債権者別の借金額と借入日が解る書類(督促状や明細書)

この督促状や明細表が手元にない場合は、金融業者の本社に連絡をして明細を送付してもらいましょう。
弁護士を代理人にしている場合は、この陳述書に必要な手続きを代行してもらえます。
陳述書に虚偽を書くと免責が不許可になる?
陳述書に虚偽があると、免責許可が不許可になるって本当なのでしょうか?
実際には、正直に陳述書を書かなかったことで免責が不許可になってしまったケースもあります。
例えばこんな嘘を書いてしまった場合です。
嘘を書いてしまったケース
- 借金額を正直に書かない(一部の債権者を隠す・金額をごまかす)
- 債権者の人数を正直に書かない(個人間でした借金を隠す・個人的に一部の債権者に返済をしているなど)
- 資産を隠す(自己破産前に車や不動産の名義を変更する・高額な宝飾品や美術品を隠すなど)
- 借金の返済をせずに高額な生活に不必要な買い物をしていた(例:20万円の時計を買ったひと月に10万円以上をエステ費用に使用した)
自己破産は申し立てれば、誰でも借金の免責を受けられる制度ではありません。
ですが陳述書に嘘を書いてしまうと、調査の過程で嘘を書いたことが分かってしまい、裁判所の心証を悪くしてしまいます。
陳述書は嘘をつかず、正しく書く事を心がけましょう。

裁判官は、自己破産をした理由よりも、「正直に真実を書き反省して更生する気持ちがあるか」を重視しています。そのため、虚偽を書くことは「この人は反省していない」と断定され、免責不許可となるのです。
今回のまとめ
自己破産手続きの陳述書の内容は、資産額・借金の詳細・同居の家族構成・仕事と収入・ギャンブルの経験を記入します。陳述書は、虚偽のないように正直に書くことが重要です。
なぜなら、陳述書に虚偽があると裁判官は「この人は反省していない」と債務者への信頼を無くし、免責不許可になる可能性が高いからです。
陳述書を書く前に、資産の見積書や借金の督促状・明細書を揃えておきましょう。

陳述書は嘘やミス無くしっかり書く必要があります。重大なミスがあったりすると、手続きが途中で止まることもあります。