
任意整理では一括返済することもできます。
このメリットは、法定利息で再計算をした借金額から、さらに減額交渉ができることです。
目次
任意整理で一括返済を選択するメリットは?
それでは具体的に任意整理の一括返済のメリットを説明していきます。
まず、一括返済する意思を提示することで1~3割程度の借金減額を金融業者と交渉できます。
「え?どうして金融業者は損をするのに減額に応じる可能性があるの?」と不思議に思われますよね。
これは、任意整理をして3~5年の返済計画を立てても、途中で自己破産してしまう人がいるからです。
もし債務者が返済の途中で自己破産をしてしまったら、借金の免責を受けて債権の大部分の回収ができなくなります。
ですが一括返済すると、3~5年での返済計画よりも回収率が高いので、減額交渉の合意が取れる可能性があるのです。

貸金業者や金融業者は、なるべく損をしたくないので、リスクとお金を常に天秤にかけて考えています。
任意整理で一括返済した方の例
任意整理をしたAさんの例
Aさん(27歳 男性 独身)の月収は手取り17万円でボーナスは無し。任意整理前の借金総額は300万円、毎月の返済額は9.2万円までになってしまい返済のために、車を手放したり食費を切り詰めました。
ですが、借金の利息を払うだけでも苦しい毎日が続いたため、弁護士に相談して任意整理を決意しました。
Aさんの借金額は、任意整理手続きをして法定利息で再計算すると、200万円まで減る事がわかりました。3年(36ケ月)で返済する場合は、200万円÷36ケ月=5.6万円となり毎月5.6万円を返していく計算になります。
ですが、Aさんの月収から生活費を引くと毎月返済できるお金は5.2万円で、必要な返済額5.6万円より少ない状況です。現在の収入と生活費のままでは3年での返済が厳しいことがわかりました。
Aさんの生活費の内訳
項目 | 金額 |
食費 | ▲2.0万円 |
家賃 | ▲万円 |
光熱・水道 | ▲0.8万円 |
家具・家事用品 | ▲0.3万円 |
服飾費(靴も含む) | ▲0.6万円 |
保険医療 | ▲0.8万円 |
交通・通信 | ▲0.7万円 |
娯楽費 | ▲0万円 |
その他消費支出 | ▲1.3万円 |
生活費の合計 | ▲11.8万円 |
手取り月収 | 17万円 |
毎月の返済可能額 | ▲5.2万円 |
毎月必要な返済額 | ▲5.6万円 |
Aさんの現在の生活費を、あと0.3万円節約をすれば返済することも可能になります。
ですが、このまま生活を続けていくと「気持ちとお金の余裕がなく、何の楽しみもなく無気力に過ごす毎日」になってしまう可能性があります。
こういう無理な生活は、普通は長続きしません。人間は我慢するとストレスが溜まって、どこかで発散したくなってしまいます。
その結果、また借金を始めることになりかねないのです。
そこで弁護士からは、「返済期間を4年に延長してもらう交渉をしましょう」と提案をされました。
ですが、Aさんは「もう借金の返済に悩んで、精神的につらい毎日から1日でも早く解放されたい」と思い、両親にお金を借りられないか相談しました。
すると両親からは、「今回は貸してあげるから一括で返済してしまいなさい」と言われて一括返済することになりました。
それから、弁護士が消費者金融・ローン会社・貸金業者と交渉をして一括返済による減額交渉をして、2割の減額で合意を取ってきため、借金総額は160万円まで減らすことに成功しました。
任意整理による借金の計算
項目 | 金額 |
任意整理前の借金額 | 300万円 |
法定利息で計算した借金額 (100万円減額) |
200万円 |
一括返済による借金額 (40万円減額) |
160万円 |
任意整理の一次交渉で、借金は300万円から200万円に、その後一括返済交渉で160万円になりました。Aさんは両親に160万円を借りて、一括返済が出来ました。
その後も、節約を心がけて両親に毎月4万円と貯金1万円をして3年4ケ月で完済しました。

この例のように、一括返済することで借金が減額されるメリットがあります。ですが、まとまったお金を用意できないときは3~5年間で、無理のない金額で毎月返済することもできます。
一括返済するためにどうやってお金を集めればいい?
「一括返済のメリットはいいけど、手元にまとまったお金がないときはどうすればいいの」と悩みますよね。借金を一括返済するためのお金は、どうやって集めればいいのでしょうか?
任意整理の一括返済をするためのお金の集め方
- 家族や知人に借りる(1人から全額が借りれないときは、少額づつ借ります)
- 資産を売却する(ブランド品・車を下取り業者に見積をしてもらい1番高額な見積を出した業者に売る)
とはいえ、任意整理を決断する状況の債務者だと、一括返済するくらいのお金を集められることはそれほど多くありません。
一括返済に成功している方は、親が協力的な場合か、もしくは手放したくない資産を泣く泣く売却した人です。
最初にまとまった金額を返済することで減額交渉が可能
任意整理で一括返済が出来ない場合でも、最初に少しまとまった金額を返済することで、さらに減額交渉ができます。
減額交渉が成功したBさんの例
Bさん(女性 24歳 独身)の月収17万円でボーナスは無し、任意整理前の借金総額210万円、毎月の返済額7.4万円にまで膨らんでしまい、家賃の支払いも滞ってしまいました。
金融会社からの支払いの催促に疲れたSさんが、弁護士に相談に行ったところ「Bさんのケースは任意整理で解決しますよ」と言われて、任意整理を決意しました。
1次交渉で210万円の借金が140万円に
法定利息で再計算した結果、借金は210万円から140万円に減って、3年間で返済する場合は、毎月3.9万円(140万円÷36ケ月=毎月の返済額3.9万円)の返済額になります。
3.9万円なら、毎月返済していくことが出来ます。ですが、Bさんは「借金を早く返して、精神的に楽になりたい」と思い、家族や知人に借入の相談をしました。しかし、借入できた金額は60万円でした。
このことを聞いた弁護士は、すぐ債権者に「1回目に60万円を返金することで、借金の減額をお願いします」と交渉をして15万円の減額で合意をとりました。
項目 | 金額 |
任意整理前の借金総額 | 210万円 |
法定利息で計算した借金額 (減額70万円) |
140万円 |
1回目に60万円を返済したメリット (減額15万円) |
125万円 |
Bさんは、1回目に60万円を返済2回目~3.6万円×1.5年(18回)で借金を完済しました。その後、Bさんは仕事での頑張りを認められ収入が2万円増えたため、家族から借りた60万円を毎月6万円×10ケ月(10回)で返済を終えました。

Bさんの例のように、任意整理後の1回目の返済額を多めにすることで、借金の減額交渉が成立することがあります。
任意整理は裁判所を通さずに、貸金業者と弁護士が直接交渉をしますので、いろんな交渉方法があるのです。
まとまったお金が少しでも用意できるなら、さらなる減額交渉材料に使える
このように、任意整理をする段階でまとまったお金を用意できる場合は、債務整理を依頼した弁護士や司法書士に「このくらい元金を減額してもらえるならいくら、借金を一括、または大部分を初回に返済できるか?」と聞いてみることです。
弁護士によっては一括返済について何も聞いてこないこともありますので、元金の減額交渉材料になりそうなものがある場合は、自分からもどんどん情報を出すべきです。
いろんな情報が多いほど、金融業者との交渉が有利に進むケースはたくさんあります。

基本的にはほとんどの手続きを債務整理弁護士にお任せできるのですが、自分の情報はどんどん出した方が、担当弁護士も交渉がしやすくなります。
今回のまとめ
任意整理で一括返済をするメリットは、法定利息で再計算した金額から更に減額できることです。まとまったお金を集めるには、家族からの借り入れや資産を売却する必要があります。
もし、借金の全額に足りなくても1回目の返済額を多くすることで、弁護士に債権者と減額交渉をしてもらえる可能性があります。

借金の返済に困った時は、まずは任意整理から考えると良いと思います。裁判所を通さないので、面倒な書類や事務手続きも少ないですし、解決までの期間も早いのです。