
任意整理をするとお金が戻ってくることがあります。これは、高利(高い利息)で借入れていた場合に法定利息で再計算をすると差額がでるからです。
目次
任意整理でお金は戻ってくる場合がある
それでは「どうして任意整理でお金が戻ってくるのか」を説明します。
法定利息と出資法を知ってますか?
任意整理では法定利息(国の法律で決められた利息の上限)で借金(債務)の利息再計算をします。すると、任意整理前に支払った返済金額との差額が出ることがあります。
「ん?どうして法定利息で再計算をすると支払い過ぎたお金が出てくるの?」と思われましたね?
これは、お金を借りた人が払う利息について、平成18年までは出資法と利息制限法の2種類が存在していたからです。
出資法では上限利息が29.2%まで、利息制限法では金額によりますが最大20.0%になっていました。その差は9.2%です。お金を貸す側としては、なるべく高い利息を取りたいと思うものです。そこで、消費者には「出資」としてお金を貸して、高い利息を取って儲けていたのです。
平成19年頃から出資法の高利が認められなくなった
【画像出典】貸金業法上限金利の引き下げについて
ですが、平成19年からは「利息制限法を違反した高利(高い利息)であることを債務者が理解した上で支払いをしていた」場合以外は認められなくなりました。
つまり、実質的には出資法の29.2%の金利が認められなくなったのです。
2010年6月18日の貸金業法改正があってから、お金を貸す際に請求できる利息は、10万円未満は20%・10~100万円未満は18%・100万円以上は15%までと決められました。
借金額 | 法定金利(年) | 出資法金利(年) |
10万円未満 | 20%まで | 29.2%まで (2010年6月18日以後、完全に認められなくなった) |
10~100万円未満 | 18%まで | |
100万円以上 | 15%まで |
そして、今まで高い利息を払い続けていた人は、貸金業者に「払いすぎていた利息を返してください」と、”過払い金”を請求できるようになったのです。
このため、利息制限法と出資法の異なる金利が存在していた時期(2010年頃まで)に借入れた借金は、任意整理で法定利息での再計算をすることにより、支払い過ぎたお金が戻ってくることがあるのです。
【関連ページ】利息制限法

任意整理をすれば誰でもお金が戻ってくるわけではありません。2010年以降に法定利息で借りた借金・短期間で返済した借金には、過払い金がないこともあります。
任意整理をしてお金が戻ってくるケース
任意整理をしてお金が戻ってくる可能性があるのは、主に下記の4つのケースです。
任意整理でお金が戻るケース
- 10年など長期間に渡って返済を続けている
- 2010年6月18日よりも前に借りたお金がある
- 5年以上をかけて完済した借金がある
- 消費者金融から高額な借金をして返済をしている
完済済みでも過払い金が戻ってくることがある
既に完済している借金でも、”過払い金”の請求ができます。
最後の取引(完済した時)から10年以内が請求時効のため、注意が必要です。

完済した借金が、10年以上経過していてもその後に、借入・返済をしていると過払い金の請求が可能な場合があります。
債務整理専門弁護士・司法書士に相談するときは、過去に完済した借金があることも伝えましょう。
過払い金とは?
TVやチラシで「お金が戻ってくる可能性があります、まずは見積を!」とやっているCMを見たことがありますよね?この戻ってくるお金は、高利(高い利息)で払い過ぎたお金を、法定利息で再計算した金額の差額です。
過払い金が発生する仕組みは、冒頭で紹介した、出資法と利息制限法が同時に2つ存在していたからです。
この支払い過ぎた差額を過払い金といいます。
【関連ページ】過払い金はなぜ生じる?グレーゾーン金利とは?
過払い金が発生している例
例えば、平成12年に50万円を出資法の上限利息29.2%で借り入れをした場合と、平成27年に50万円を利息制限法の18%で借り入れた場合の差額をみてみましょう。
50万円を借りて毎月1.5万円返済した場合
支払い回数 | 年29.2%での借金残高 | 年18%で再計算した借金残高 | 差額(円) |
1 | 497,000 | 492,397 | 4,603 |
5 | 484,263 | 460,845 | 18,654 |
10 | 466,544 | 418,706 | 47,838 |
15 | 446,594 | 373,357 | 73,237 |
20 | 424,133 | 324,552 | 99,581 |
この表にように、29.2%と18%で計算したときに差額が出ることがわかります。
20回支払った時点で約10万円弱利息を払いすぎていることになります。
完済していても返済中でも、この差額が過払いとして戻ってくるのです。もし返済の途中で任意整理をしたら、借金がゼロになっていたということもあります。
過払い金請求は自分一人だと難しい
ですが、個人で直接消費者金融やローン会社に「過払い分を返してください」と交渉しても、業者側は法律知識が浅い人を相手に交渉すると手間がかかりますので、相手にされないケースが多くなっています。
ですが利息制限法や法律知識に詳しい弁護士・司法書士が相手になると、人間は肩書に弱いこともあって、業者側も交渉に応じてくれるようになります。
任意整理をして過払い金の回収をするときは、消費者金融・ローン会社の交渉をスムーズ進めるために、債務整理専門の弁護士・司法書士に依頼されることをお勧めします。
【関連ページ】過払い金返還請求は自分で出来ますか?

任意整理は裁判所を通さずに、業者との直接交渉になるので、一般個人だと難しい状況です。
今は無料で過払い金の計算をしてくれる弁護士・司法書士事務所があるため、金額を確認してから依頼することをお勧めします。
今回のまとめ
任意整理でお金が戻ってくるのは、過去に出資法の高い利息で借り入れをしていた場合です。この借入額を法定利息で再計算をすると、払い過ぎた差額分のお金が戻ってきます。この戻ってくるお金を、過払い金といいます。
2010年より前の借金は、高い利息で払い続けていた可能性が高いので過払い金がある可能性があります。
そして、完済した借金についても過払い金の請求ができる可能性があるため、債務整理専門の弁護士・司法書士に相談してみましょう。

法改正になって10年が経過しようとしていますので、過払い金が発生していることは大分なくなりました。
過払い金が無くても、任意整理は交渉次第でこれから発生する利息をカットしたり、元金を減らすこともできます。
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