
個人再生を行うメリットは、マイホームや資産を残して借金を5分の1~10分の1に減額し、3~5年の短期間で完済できることです。
デメリットは、破産者として官報に掲載される、7年間~10年間は新しく借入れができないことなどがあります。
目次
個人再生をするメリット
個人再生メリット
- マイホームを残せる
- 借金の減額幅が大きい
- 職業の制限を受けない
- 借金の理由を問われない
- 強制執行による財産の差し押さえを中止できる
- 貸金業者からの取り立てや利息発生がストップする
1.マイホームを残すことが出来る
個人再生をする最大のメリットは、マイホームを残しつつ借金の整理ができることです。
具体例
例えば住宅ローンを組んでマイホームを購入後、不景気で会社の給料が大幅カット。
消費者金融から500万円の借り入れがあって、貯金も底を尽いて住宅ローンとサラ金の返済が苦しくなりました。
自己破産では持っている財産がマイホーム含めて全て処分されてしまうので、どうしようかと困って債務整理専門の弁護士に相談。
”個人再生”という方法があることを知りました。
個人再生をすると、住宅ローンの返済額を減らすことはできませんが、他の借金を5分の1に減らすことが出来て、残った借金は3年をかけて返済します。
個人再生申し立てをした結果、500万円あった消費者金融の借金は100万円に。残った借金は利息も発生しなくなります。
個人再生前は消費者金融だけで毎月9万9,000円の返済でしたが、これが毎月2万8,000円ずつ36カ月間かけて返済する再生計画案が認められました。
マイホームはそのまま残すことができて、現在の収入の範囲内で住宅ローンと残った借金の返済は滞りなくできるようになりました。

これが個人再生です。企業が利用する”民事再生の個人版”のようなもので、住宅ローンを除いた借金が5000万円以下であれば利用することができます。
返済期間は基本的には3年間ですが、最長5年までが認められています。
2.借金の減額幅が大きい 個人再生でどのくらい借金が減るか?
個人再生では、住宅ローン以外の借金額によって、どのくらい借金が減るかが変わります。現在では以下の通りに定められています。
借金額(住宅ローン除く) | 減額幅 |
100万円未満 | 減額無し |
100万円以上500万円未満 | 100万円に減額 |
500万円以上1500万円未満 | 5分の1に減額 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円に減額 |
3000万円以上5000万円以下 | 10分の1に減額 |
個人再生申し立てをする人の多くが、100万円~1500万円の借金を抱えていますので、多くの法律事務所や裁判所では「だいたい5分の1に減る」と説明していることが多いようです。
ですが、上記の表が適用されるのは財産がほとんどゼロの場合です。住宅以外の不動産(土地)や動産(宝飾品・高級車など)を持っている場合は、その評価額が減額された借金に上乗せされることもあります。

持っている財産の評価額が借金に上乗せされることは、難しい言葉で”清算価値保障原則”と言います。
お金を貸した側からすれば「財産を持っているならそれを売ればいいじゃないか」という反対意見が出る事は明らかですので、処分されないかわりに評価額を上乗せするような仕組みにしているのです。
他の自己破産・任意整理・特定調停ではどのくらい借金が減る?
他の債務整理方法でどのくらい借金が減るかを見ていきましょう。
債務整理方法 | 減額幅 | 財産 |
任意整理 | 貸金業者との交渉次第これから発生する利息はカットされる可能性大 元金が減額されるかは場合による |
手放す必要無し |
特定調停 | ||
自己破産 | 税金以外の借金はゼロになる | 全て処分される |
任意整理や特定調停だと、消費者金融との交渉で借金をどのくらい減らすかを決めます。
多くのケースでは、これから発生する利息についてはカットされる和解が成立していますが、元金が減るかは交渉にあたる人や会社次第です。
元金が1~2割ほど減ることもありますが、個人再生のように5分の1まで減る和解に至ることは、なかなかありません。
自己破産をすれば借金はゼロにはなりますが、他の方法に比べるとデメリットも多いですし、マイホームを手放す必要があります。
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3.職業の制限を受けない
自己破産の場合は、借金が帳消しになる免責許可がおりる6カ月ほどの間は、特定の職業に就けません。つまり、一旦退職するか休業せざるを得なくなってしまいます。
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ですが個人再生の場合、そういったことはなく、仕事を続けながら債務整理をすることができます。これを”職業の制限を受けない”と表現します。
4.借金の理由を問われない
自己破産の場合は借金をした理由によっては、免責を受けることが出来ません。
例えばギャンブルと酒の為の借金で首が回らなくなったという理由の場合、裁判所側が「そんな理由では借金は帳消しに出来ませんよ、ちゃんと働いて支払ってください」と宣告することもあります。(それでも9割ほどの案件は面積が認められますが)。
ですが、個人再生の場合はどんな借金の理由であれ、それが問題視されることがありません。
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5.強制執行による差し押さえを解除できる
もし消費者金融や銀行から強制執行で給料の差し押さえや住宅の差し押さえをされていた場合は、個人再生申し立てをすることでこれを解除することができます。
解除をするには、個人再生申し立てと別に”強制執行中止命令の申し立て”をする必要があります。
【関連ページ】個人再生を申し立てようとしたら強制執行で給料の差し押さえを受けました
6.貸金業者からの取り立て、利息発生がストップする
個人再生を申し立てると、裁判所側が借金をしている貸金業者や消費者金融に、個人再生の申し立てを受理した通知を送ります。
その時点で、取り立て行為は禁止になり、返済や利息発生も凍結されることになります。

電話催促や催促の郵便物のすべてが止まります。
個人再生をするデメリット
個人再生デメリット
- 官報に載ることで会社に知られる可能性がある
- ブラックリストに載ることで個人再生後の10年は借入れが難しくなる
- 無職・生活保護者は利用できない
- 一部だけの借金の減額が出来ない
- 連帯保証人がいる借金は整理できるが、減額された分は連帯保証人に請求される
1.官報に載る
個人再生を行うと、国の広報誌である官報に個人情報が載ります。
官報は1日2~3回、入札・倒産・民事再生情報が掲載されます。企業によっては毎日チェックしてますので、この情報が元になって返済できないくらいの借金を抱えていたことが会社に知られてしまう可能性があります。

多くの企業ではわざわざ官報はチェックしていないのですが、倒産情報や入札情報はチェックしていることもあります。
2.ブラックリストに載ることで10年間は借り入れができなくなる
官報に個人情報が掲載されたことで、個人信用期間の情報にリストアップされます。つまり、「この人にはお金を貸したり、ローンを組んではいけない」ブラックリストに載ります。
ブラックリストに載ると、10年間はクレジットカードを作ったり、新しく借金をすることが出来なくなります。

ですが、考え方によっては借金ができないということはメリットでもあります。身の丈に合った生活を送る更生が出来るチャンスにもなります。
3.無職では個人再生は利用できない
個人再生は元々「安定収入があるサラリーマンが、マイホームを手放すことなく、その後も働き続けながら借金を減らして残った借金を少しずつ返していく」という制度です。
ですので、無職の方が利用することは出来ません。生活保護を受けている場合も出来ません。個人事業主・パート・アルバイト・年金生活をしている方は利用できます。
4.一部だけの借金整理はできない
個人再生では、債務者(あなた)が抱えている全ての借金を整理することになります。
「この業者の借金だけ整理して、親族や友人から借りた借金は整理しない」ということは出来ません。
もし借金の一部を隠して個人再生をしてしまうと、後で個人再生じたいが無効にされてしまうこともあります。
5.借金の残りは連帯保証人が支払わなければならない
連帯保証人がいる場合は、話がちょっとややこしくなるので詳しく解説しておきます。
もし連帯保証人がいて債務者(あなた)本人が個人再生を申し立てると、減額された借金が保証人に一括請求されることになります。
実際には一括請求されても支払えないケースが多いので、消費者金融や貸金業者などの債権者と保証人で話って、一括ではなく分割で返済していくケースが多くなっています。
連帯保証人がいて個人再生をした場合の返済例
例えば債務者(あなた)が1000万円の借金を残して個人再生を申し立てたとします。この時点で、連帯保証人に1000万円の請求がいきます。
その後個人再生手続きが終わって、1000万円の借金が100万円に減額されました。債務者(あなた)は100万円をローンで支払っていきますが、連帯保証人は900万円を支払う必要があります。
つまり連帯保証人がいる場合は、個人再生をしたとはいえ、二人で残った借金全額を支払う必要があるのです。

連帯保証人がいて個人再生をした場合、連帯保証人が支払う金額があまりに大きくなる事が多いので、大きな揉め事になることは避けられません。
結局は債務者と連帯保証人が同時に個人再生や自己破産をするケースもあります。
今回のまとめ
個人再生をするメリットは、マイホームを残せる・自己破産と違い借金の理由が問われない・職業の制限を受けない・任意整理よりも減額の幅が大きいことです。
官報や信用情報機関に個人情報が載る・10年間は新たな借り入れができない、クレジットカードが作れない保証人がいる借金は整理できないため、減額されても残った借金は保証人に請求されることになります。

個人再生はマイホーム・持家を残して借金整理した方にはメリットが多い債務整理です。
手続きや準備書類がとても難しいので、債務整理専門の弁護士に依頼する必要があります。
借金問題・債務整理専門の法律事務所は最初の相談料が無料になっていることが多くなっています。