
給与所得者再生を利用した場合、借金の返済金額をどのように決定するのか気になりますよね。
今回は、決定方法について説明していきます。
目次
給与所得者再生の返済金額を決めるための条件
給与所得者再生を利用した場合には、返済金額を決定するための3つの条件が定められています。
返済金額を決定するための3つの条件
- 条件1:”清算価値保障の原則”があり、自己破産をした場合以上の金額を返済すること。
- 条件2:”可処分所得”の2年分以上または、資産総額の高額な方を返済金額とすること。
- 条件3:条件1・2と比べて高額な方を返済金額とすること。
このような条件があるため、自己破産で没収される際のお金や、小規模個人再生を利用した返済金額よりも高くなります。

給与所得者再生を利用する場合、高収入ですと小規模個人再生の方が返済金額が少額になるメリットがあります。
ですがそのかわり、債権者の同意を得る必要がありますので、小規模を選ぶと反対される可能性も高くなります。
清算価値保障の原則とは?
条件1に書いている”清算価値保障の原則”とは、「自己破産を利用したときに債権者(貸し主)に配当される金額以上である」という条件のことで、これは法律でも定められてます。
つまり、給与所得者再生を利用した場合は自己破産をした時に没収されるお金や財産よりも返済金額が高額になるのです。
この条件は、小規模個人再生を利用する場合も同様に定められています。
清算価値保障の原則については、小規模個人再生での返済金額は?のページでも詳しく書いていますので、合わせてご参考ください。
可処分所得について
可処分所得とは、労働により得た給料やボーナスから”最低生活費”や税金を引いて、残った収入のことです。
この可処分所得を算出するために必要な3つの項目について、説明をしていきます。
1.収入について
収入とは、源泉徴収票の支払い金額欄に記載されている「収入金額」です。
源泉徴収票が無い場合は、給料明細や課税証明書で算出します。
2.税金について
- 源泉徴収税額欄に記載している金額
- 住民税については、給料明細の住民税の欄に記載している金額
- 社会保険料は、源泉徴収票の社会保険料等の金額欄に記載されている金額
上記の3つを合計した金額が、可処分所得の算出で収入から引かれる税金の金額です。
収入や税金の算出をするときは、源泉徴収票と給料明細の2つを用意する必要があります。
この算出に使用される最低生活費は、各家庭や個人の事情による金額ではなく、法令で定められた金額のことです。
3.最低生活費の算出について
可処分所得の算出に必要な”最低生活費”の算出方法について説明していきます。
この最低生活費とは、個人別生活費・世帯別生活費(扶養者)・冬季特別生活費・住居費・勤労必要経費が含まれています。
この算出には、「民事再生法第241条第3項の額を定める政令」の別表に住んでいる地域別に金額が定められています。
【関連外部リンク】民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令
上記リンクの表は、第一区から第六区までの地域別に金額が定められています。第一区の表を記載しましたので参考にして下さい。
個人別生活費
区別 | 20~40歳未満 | 40歳 | 41~59歳未満 |
第一区 | 49.9万円 | 48.8万円 | 47.8万円 |
第二区 | 47.7万円 | 46.6万円 | 45.6万円 |
第三区 | 45.4万円 | 44.5万円 | 43.5万円 |
第四区 | 43.2万円 | 42.3万円 | 41.3万円 |
第五区 | 40.9万円 | 40.1万円 | 39.2万円 |
第六区 | 38.7万円 | 37.9万円 | 37.0万円 |
世帯別生活費 第一区 20~40歳未満
人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人~ |
金額 | 52.7万円 | 58.3万円 | 64.7万円 | 75.3万円 |
冬季特別生活費 第一区
人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人~ |
金額 | 1.6万円 | 2.0万円 | 2.4万円 | 2.7万円 |
住居費 第一~区
人数 | 1人 | 2~7人未満 | 7人~ |
金額 | 55.0万円 | 71.4万円 | 85.7万円 |
勤労必要経費 第一~二区
年収 | 200万円未満 | 200~250万円未満 | 250万円~ |
金額 | 49.0万円 | 52.5万円 | 55.5万円 |
最低生活費の算出例

いろいろ説明してきましたが、難しくて分かりにくいですよね。
それでは、最低生活費の算出方法について、東京都八王子市に在住しているAさん男性27歳(扶養者なし)年収230万円の例で最低生活費の表を例にしてみていきましょう。
基本的には、源泉徴収票とご紹介した算出表に当てはめるだけでOKです。
項目 | Aさんの場合(年間) |
個人別生活費 | 49.9万円 |
世帯別生活費 | 52.7万円 |
冬季特別生活費 | 1.6万円 |
住居費 | 55.0万円 |
勤労必要経費 | 52.5万円 |
合計 | 211.7万円 |
Aさんの最低生活費(年間)は、各項目の合計した211.7万円になります。これで最低生活費の算出が終了しました。
この金額を元に可処分所得の計算ができるようになるのです。
可処分所得の算出方法
可処分所得を算出するためには、以下の式を使用します。
可処分所得の算出方法
可処分所得=A―(B+C+D)―E
- A:過去2年分の収入額
- B:過去2年分の所得税
- C:過去2年分の住民税
- D:過去2年分の社会保険料
- E:2年分の最低生活費
上記の式にて、可処分所得が計算できます。
この可処分所得2年分・資産総額・最低弁済基準額を比べて返済金額が決定します。
資産の有無により返済金額が変わる可能性について
資産の有無によって、借金の返済金額が変わる可能性があります。実際に、資産のある人の例で説明していきます。
田中さん (男性 40歳 借金1200万円 資産500万円)
項目 | 金額 |
最低弁済基準額 | 240万円 |
資産 | 500万円 |
可処分所得 | 250万円 |
田中さんの場合は、資産がもっとも高額となるため500万円を返済することになります。
田中さんが実際に減額できたのは、700万円です。
鈴木さん (女性 33歳 借金450万円 資産80万円)
項目 | 金額 |
最低弁済基準額 | 100万円 |
資産 | 80万円 |
可処分所得 | 25万円 |
鈴木さんの場合は、最低弁済基準額がもっとも高額なため100万円を返済することになります。
鈴木さんが実際に減額できたのは、350万円です。
佐藤さん (女性 26歳 借金200万円 資産なし)
項目 | 金額 |
最低弁済基準額 | 100万円 |
資産 | 0円 |
可処分所得 | 110万円 |
佐藤さんの場合は、可処分所得がもっとも高額になるため110万円を返済することになります。
佐藤さんが実際に減額できたのは、90万円です。
今回のまとめ
給与所得者再生は、最低弁済基準額・資産・可処分所得のもっとも高額なものが、返済金額となります。この返済を決定するためには、可処分所得の算出や資産価値を調べる必要があります。
この手続きや調査をすべて個人ですることは、大変な時間が必要となり仕事をしながら進めるのが困難なため、借金問題に強い弁護士や司法書士への依頼をお勧めします。

給与所得者再生は、小規模個人再生よりも返済金額が高額になる可能性があります。ですから、高額な借金をしている債権者の反対がないのであれば、小規模個人再生の利用を考えてみましょう。