雨宮先生雨宮先生

奨学金を返済できない人が年々増え続け、自己破産をした人が累計1万件と突破しました。

なぜこのような状況になったのでしょうか。今回は奨学金破産の現状についてご説明します。

なぜ奨学金破産が増えているか

奨学金の滞納者数増加

奨学金滞納者数の推移【出典】http://www.fujitv.co.jp

現在日本学生支援機構(JASSO)が貸し出している奨学金は、132万人へ総額1兆円。債務平均額は1人平均300万円。主に学生の2人に1人が奨学金を借りている現状です。

そして、その4分の1にあたる約33万人の925億円の奨学金が、返済できず滞納している状況になっています。

奨学金の滞納が続くとどうなるか

奨学金滞納で返済督に追われる

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奨学金の滞納が続くと、いろいろなペナルティが課せられます。
まず毎月の返済予定日に奨学金を返済しないと、5%の延滞利息が付きます。そして3か月以上滞納すると、個人信用情報機関のブラックリストに掲載され、新たなローンや新規クレジットカードを作る事ができなくなります。

さらに、債権回収会社が返済の督促や取り立てを開始します。取り立ては近年厳しくなってきており、自宅への電話は多く、職場への督促の電話も行われています。

そして9カ月間滞納すると、裁判所から一括返済命令が下され、場合によっては訴訟になって給料や財産の差し押さえが始まります。

返済を諦めて自己破産を選ぶ人が増加

滞納して9カ月ほどで裁判所から一括返済命令が届く流れですので、その前に自己破産の道を選ぶ人が増えています。自己破産を選ぶ理由は返済できる見込みが無いからですが、その主な理由は以下になります。

奨学金が返済できなくなった理由

  • 大学を卒業しても非正規雇用などで毎月の給料が少ない
  • 大学時代に借りた奨学金が莫大で、毎月の返済額が多すぎる
  • 失業・病気で仕事ができなくなった

現在の日本の会社は人件費削減のために、非正規雇用を利用することが増加しています。その数は、日本全体の労働者数の3分の1にもなります。

また、大学時代に借りた奨学金が積み重なって1000万円を超えている方も少なくありません。特に職が無いからと大学院へ進学された学生に多く、この時期に奨学金が400万円ほど借り増ししている傾向が強い状況です。1000万円の奨学金を借りた場合、第一種無利子でも月々34,000円の返済を最長25年間、第二種有利子の場合は月々38,000円を最長25年間、大学卒業の次月から返済する必要があります。

他には勤めていた会社が突然の倒産で失業したり、うつ病が原因での仕事をすることができなく、収入が途絶えて返済ができなくなるケースも増加しています。

奨学金を借りた本人が自己破産するとどうなるか

奨学金を借りた本人が自己破産して裁判所から免責が認められれば、奨学金を返済する義務が無くなります。ですが、連帯保証人になっている親の元へ裁判所から返還請求が届きます。

そのため、借りた本人が自己破産するかは事前に親と相談されるケースが多く、親御さんに資産があれば一括返済するか、分割で返済を続けるケースもあります。
ですが、借りた本人と連帯保証人の親両方に返済能力が無い場合、まず借りた本人が自己破産をして、次に連帯保証人である親が自己破産をする”自己破産の連鎖”が起きます。

【関連ページ】
自己破産をすると奨学金の返済はどうなる?親子共に破産することも
自己破産をするメリットとデメリットは?

親が住宅ローンを持っていたら民事再生(個人再生)を選択するケースも

もし連帯保証人である親が住宅ローンを抱えていた場合は、自己破産により住まいを失いたくないと民事再生手続き(個人再生)を選ばれるケースもあります。民事再生(個人再生)だと、住宅を残しつつ奨学金の返済額を最大5分の1にまで減額することができます。

ですが、持っている他の財産は処分する必要があったり、新規ローンを10年近く組めなくなるなど様々なデメリットもあります。

【関連ページ】個人再生のメリットとデメリット

破産しやすい悪循環が出来上がっている

奨学金滞納や自己破産者増加の理由は、”滞納・破産しやすい悪循環”が出来上がっているからです。

奨学金返済滞納の悪循環

まず日本経済の冷え込みから、平均年収が平成9年の467万円をピークに平成26年では415万円まで下がりました。給与所得が下がりますから、当然家計も悪化します。
家計が悪化すれば「子供はお金がかかるから」と少子化に繋がり、学校の授業料も高騰します。最近では、結婚した夫婦共に奨学金受給者で、二人の月々の返済額が4~5万円の夫婦もいます。これでは子供を沢山作ろうという考えも薄れてしまいます。

授業料が高騰すれば、奨学金がその分多く必要になります。家計が悪化しているので、満足な仕送りも期待できません。実際に、ここ20年で平均仕送り額は12.5万円から8.4万円まで減少しています。

奨学金を多く借りれば、その分返済額も多くなるわけですから、家計が悪化して消費能力が減り、さらに経済は冷え込んでいくという悪循環が出来上がってしまっているのです。

奨学金滞納・自己破産に対して世論は賛否両論

奨学金の滞納者や自己破産する現状に対して、世論は賛否両論です。

  • 「奨学金と名のついた、ただの借金じゃないか」
  • 「なぜ日本は給付型の奨学金制度が無いのか。制度改革が必要」

という声もあれば、

  • 「自分で借りると決めたお金なんだから、バイトでもなんでもして必死に返済するべき」
  • 「奨学金のおかげで大学に行って勉強できたんだから、返済して当然」
  • 「学生時代に多額の借金をして勉強しているという意識が甘すぎる。スマホや飲み会にはお金を使う余裕があるなら返済すべき」

といった厳しい声もあります。

日本学生支援機構の対応

この状況に対する日本学生支援機構(JASSO)の対応をご存じでしょうか。実は2014年4月から様々な救済措置を行っていたのです。

日本学生支援機構の奨学金滞納への対応

  1. 延滞金年10%を2014年4月以降は5%に引き下げ
  2. 返還期限猶予制度の年数を通算5年から10年へ延長
  3. 返還期限猶予
  4. 減額返還制度・返還期限猶予制度の基準緩和

【参考】独立行政法人日本学生支援機構 – JASSO

詳しくは日本学生支援機構のホームページをご覧いただければ分かりますが、返済滞納した場合は「返済を数年お休みできる制度」や、「月々の返済額を少なくして返済期間を延長する制度」など、新しい取り組みが行われています。

ですが、これからは借金額が減額するものではなく、結果的には借りた分は全て返済することには変わりはないものです。

貸付型給付金は実は日本だけ?!

アメリカドイツフランスの奨学金制度

皆さんは海外の「奨学金」の位置付けをご存じでしょうか?アメリカ・ドイツ・フランスで言われている奨学金はほとんどが給付型奨学金で、返済する必要が無いものです。その代わり入学前も在学中も成績が飛びぬけて優秀である必要があるのですが。

つまり、これら他国の奨学金は「勉強を頑張るかわりに返す必要が無い」と認識が常識です。どういうわけか日本だけが「奨学金=借金」という貸付型奨学金になっています。

民間が利益を上げて天下り先になっている現状

そして日本の貸付型奨学金の利息だけで320億円もの利益があり、これらは日立キャピタルなど民間の債権回収会社が利益を上げたり官僚の天下り先にもなっていて、今までずっとこれが問題視されていました。

そんな中2016年は3月には安倍総理が1億総活躍プランの提言で「給付型奨学金制度も用意していきます」と宣言しましたので、今後は少しですが給付型奨学金も増えていくのではないかと言われています。

ですが、現在日本の奨学金の99%が貸付型奨学金、その額は1兆円。海外の国に比べて「教育にお金をかけないワースト1」と言われている国が、給付型奨学金制度へどれだけ本気になるかはあまり当てに出来ないと私は思います。

国の予算をもっと教育費に回して欲しいと願います

日本は教育にかける予算を年間3000億円程増加すれば、授業料がフランスのように無料に出来る大学が増加し、質の高い学びを得た学生が社会人になって経済を活性化させてくれる可能性が高くなるのではないか?と思います。

東京オリンピックの国立競技場の建設費問題で、軽々と「2000億くらいで・・」と言っているのであれば、教育にかける予算をもっと増額した方が将来の日本にもっと恩恵をもたらしてくれるのではないでしょうか。

雨宮先生雨宮先生

お金が無くて教育ができない家庭が増えれば、日本の国の力も衰えていきます。