
自己破産してマイホームや自動車などの財産を失いたくない、仕事を失いたくない人は、借金整理方法として”民事再生”という選択肢があります。
目次
自己破産をしたくない人の理由
自己破産をしたくない理由のトップ3
- 自己破産をするとマイホームや高価な自動車を処分する必要があるから
- 「〇〇士」として仕事をしているので、自己破産をすると職を失ってしまう
- 自己破産をしても、まともな理由じゃないので免責される可能性が無い
自己破産をしたくないと仰る人の多くは、仕事にも就いているし定期的な収入もあるので、借金の月々の返済額が少なくなれば自己破産をしなくても良いし、マイホームや高級自動車のローンも払っていける場合です。
また、自己破産をすると免責が認められるまでの数カ月間は〇〇士は職業制限を受けてしまうので、仕事を失ってしまうのは困るというケース。
ギャンブルや娯楽で多重債務に陥ってしまったので、自己破産をしても借金の免責が認められる可能性が少ないケース。
これらの問題を抱えている方が「自己破産をしたくない、何とか他の借金整理方法が無いか」とご相談されます。
この場合は他に2つの借金整理の方法があって、今回はマイホームや自動車ローンを残しながら大幅に借金を減額できる可能性のある”民事再生”(別名は個人民事再生・個人再生)について解説していきます。
民事再生が向いているケースは?
民事再生はこんな人が向いている
- 返せない借金を抱えて、マイホームや自動車など生活に必要な財産を残したい人
- 自己破産をして仕業の職を失いたくない人
- 自己破産をしても免責を得られる可能性が無い人
600万円の多重債務をかかえた佐藤さん一家の例
例を挙げます。月収35万円のサラリーマン佐藤さん。中小企業診断士の資格を利用してコンサルタント会社に勤務しています。
結婚して子供も3人いてマイホームを持ってますが、増え続ける生活費や教育費に加えて趣味のギャンブル借金が積み重なって、多重債務を繰り返した結果借金総額は600万円まで膨らみました。
自己破産をすれば借金がゼロになる可能性はありますが、自己破産は免責決定がされるまでの数カ月間、中小企業診断士としての仕事はできなくなります。これでは会社をクビになってしまいますし、マイホームも競売にかけられて、家族の住む場所を失ってしまいます。また、ギャンブルが理由での多額の借金の場合、免責が認められない可能性も出てきます。
佐藤さんのような状況の場合、とてもじゃないですが自己破産を簡単に選択することはできません。
ですが民事再生(個人再生)という借金整理方法が成功すれば、600万円の借金は120万円ほどまでに減額する可能性があり、マイホームを残すことも出来ます。
民事再生のメリットとデメリットは?
民事再生のメリット
民事再生のメリット!
- マイホームや自動車など高価な財産を売却せずに済む
- 借金を大幅に減額できる
- 借金の理由を問われない
- 生命保険などの解約をする必要が無い
- 仕事を失わずに済む
民事再生は、自己破産をしたくない人に最適な借金整理方法です。
まず借金を5分の1~10分の1程度まで減らすことができるうえに、マイホームや高級自動車の資産を手放さずに済みます。この場合、マイホームや自動車のローン返済額を減らすことは出来ません。主に消費者金融や銀行からの借金を減額することができて、残った借金は3年~5年計画で返済を続けます。
また、民事再生では自己破産のように借金の理由を問われません。定職に就いている方はどんな方でも利用できます(パートやアルバイトも可)。
さらに自己破産では〇〇士という仕業に就いている場合は一定期間職業制限がかかりますが、民事再生では仕事を続けることができます。
民事再生のデメリット
民事再生のデメリット!
- 借金がゼロにはならない
- 弁護士費用・予納金(個人再生委員報酬)がかかる
- 無職や自営業では利用できない
借金は減るがゼロにはならない
民事再生では借金が減額はされますが、借金がゼロになるものではありません。住宅ローンやマイカーローンは減額されずに、そのまま返済を続ける必要があります。また、他の借金は減額されますが、残った借金は毎月少しずつ返済していく必要があります。
弁護士費用がそれなりにかかる
また、民事再生は個人で手続きは行えませんので、弁護士費用のほかに予納金が多額にかかります。(合計で40万円~50万円ほどかかります)
予納金は弁護士に依頼した場合は3万円ほどです。東京裁判所の場合は着手金と再生委員への報酬が15万円かかります。弁護士費用は借金の額によって変わりますが、相場としては着手金が4万円前後、成功報酬が減額された借金の10~20%ほどの合計額です。裁判所への予納金は、後で返還されます。
定期収入がある人だけが利用できる制度
また、無職や自営業ではこの制度は利用することが出来ません。残った借金を継続的に返済できると認められた人(定期収入がある人)だけが対象になります。
個人事業主、パート・アルバイト・年金受給者でも申し立てができますが、無職では却下されてしまいます。ただし、近いうちに就業の予定があると認められれば利用も可能です。
【関連ページ】個人再生のメリットとデメリット
民事再生を弁護士に依頼した後の流れ
1.弁護士へ依頼→貸金業者へ受任通知→返済や取り立てが一旦ストップ
民事再生の依頼を弁護士にすると、弁護士から消費者金融や銀行側へ「民事再生の依頼を受けました。これから手続きに入ります」という受任通知を発送します。この通知が送られると、一旦取り立てや毎月の返済はストップされます。ですが、住宅ローンやマイカーローンは支払い続ける必要があります。
2.収入や財産の審査をして再生計画を立てる
次に、毎月の収入や持っている財産の状況を審査して、「借金をどのくらい減らせば、マイホームやマイカーローンも支払いながら生活を維持できるか」という”再生計画”を立てます。
再生計画では、毎月の生活費の現状などを細かく審査されて、再生委員会から「外食費を削って自炊にしなさい」「スマートフォンの契約を格安SIMなどにして通信費を抑えなさい。その分借金の返済に回しなさい」などと指摘やアドバイスを受けます。
再生後の返済条件
再生の返済条件は、3年以内に完済することが条件です。ですが、もし住宅ローン特約を再生計画に入れていた場合、住宅ローンの完済期限を合計5年間まで延長することが出来ます。(つまり、3年返済計画の場合はプラス2年まで延長可能)
ただし、70歳までに完済することが義務付けられています。
3.再生計画に基づく返済トレーニングを開始「履行テスト」
次に、毎月の一定の金額を裁判所が設置した再生委員会側に積み立てていきます。これを”履行テスト”と言います。
つまり、「この申立者が毎月本当に返済してやっていけるのか」をテスト・トレーニングする目的で行われます。これは6カ月間行われて、通常は半年間で15万円支払う必要があります。
4.再生計画の認可が確定されれば、翌月末日から返済開始
再生委員会の履行テストが終了して、無事に再生計画が認可されれば、借金が減額されて翌月末から返済を開始します。返済は貸金業者が指定した銀行に振り込むことになります。
もし再生計画が認可されなかったら?
もし再生計画案が不認可になってしまったら、借金は減額されずに民事再生手続きは終了になります。
再生計画案が不認可になるケース
- 無理な再生計画を立てている
- 履行テスト(返済トレーニング)の途中で返済しなかった
- 小規模民事再生で、債務者(貸金業者)の過半数が反対したか、債務総額の2分の1以上の借り入れ先が再生計画に反対した
ですが、再生不認可になった理由を解消するようにすれば、ふたたび民事再生申し立てをすることができます。他には、減額幅は少なくなりますが”任意整理”という借金整理で返済が続けられないかを検討します。

任意整理は、裁判所を介さずに弁護士や司法書士が貸金業者と直接交渉して、借金の減額やこれから発生する利子のカットを目的としたものです。
詳しくは任意整理のメリットとデメリットは?をご参考ください。
民事再生計画どおりに返済ができなくなったらどうなるか?
もし民事再生計画が認可されたのに、途中で返済ができなくなってしまったら、貸金業者から申し立てられて再生計画が取り消されてしまうことがあります。
取り消されると、減額された借金は元の借金額に戻る事になってしまいます。
返済期間の延長や免除も可能
ですが、勤め先の不景気による影響の給与減や長期入院などやむを得ない事情がある場合は、再度申し立てて返済期間を延長することができます。
もし再生計画で定められた返済金額の4分の3以上を返済し終わっている場合は、残りの借金は免除を受ける事も可能です。これを”ハードシップ免責”と言います。
【関連ページ】個人再生の返済中に支払いが出来なくなったら?
今回のまとめ
もしマイホームや自動車ローンを組んでいたり、仕事を失いたくない場合は、自己破産の前に民事再生を検討しましょう。
借金が5分の1から10分の1まで減額できる可能性があり、マイホームや自動車を残すことができます。
もし民事再生で再生計画が不認可になった場合は、不認可理由を解消して再度申し立てるか、任意整理も検討してください。

自己破産は最終手段です。家族がいてマイホームを持っている場合は、弁護士に相談して民事再生(個人再生)ができないか検討してみてください。
再生計画が認められたら、しっかり完済するように頑張ってください。