
「借金・債務整理問題を弁護士に依頼したから、後は結果を待つだけでいい?」と気を抜かないようにしましょう。
実は、委任契約や書類の準備など自分ですることもたくさんあるのです。
目次
弁護士と委任契約を結ぶ
弁護士への依頼を決めたら、委任契約を結び”委任契約書”の作成をします。この手続きは、弁護士が代理人となり債務整理の手続きをするために必要なものです。
弁護士は、債務整理を代理人として手続きを進める過程で債権者や裁判所に”委任状”の提出が必要になるため、”委任契約”を結びます。つまり、委任契約が無いと代理人として動くことができないのです。
委任契約の手続きとは?
委任契約の手続きは、相談者が依頼をするにあたり、費用面・代理で行う内容・結果(可能性)・注意事項について納得して契約を交わす書類(委任契約書)を作成することです。
ですが、「契約を交わしたから安心」と契約書の内容の確認を怠り、提出書類を期日が過ぎても用意しない・書類に嘘があったなどがある場合、弁護士が辞任してしまう事もあるため注意が必要です。
委任契約書の記載内容
項目 | 内容 | 備考 |
依頼内容 | 任意整理・過払い金請求・自己破産・個人再生など | 依頼した内容を記載 |
弁護士報酬 | 着手金・成功報酬・減額(回収)報酬など | |
その他費用 | 1.日当 2.実費など |
1.遠方の裁判所への出廷や債権者との交渉時に必要な場合がある 2.交通費・通信費・予納金など |
費用の支払い方法 | 着手金や報酬の支払い方法 | 一括払い・分割払いなど |
債権者を訴える場合 | 訴訟が必要になった場合の詳細 | 訴訟になった場合に別件で依頼や費用が必要か否か |
費用に支払いが滞った場合 | 弁護士費用を支払いが滞った場合 | 裁判所に訴えて資産を差押える・弁護士が辞任するなど |
契約の解除に関して | 委任契約を解除する場合 | どんな状況や行動をしたときに契約を解除(辞任)されるかの詳細 |
弁護士費用の全額請求に関して | 依頼人に原因があり契約解除になった場合は弁護士の全額請求をすること | 自分に非があると、着手金のみならず実際にかかったすべての費用を支払うことになる |
期限の利益を喪失する場合 | 分割での弁護士費用の支払いが遅れたり、催告を無視して支払わないと一括払いを請求すること | 弁護士費用の支払いが遅れる、厳しくなったときは迅速に担当弁護士に相談をする |
特に”日当”についての条件は、各弁護士事務所で異なるため確認をしておく必要があります。例えば、近県であれば日当がかからない・事務所より300㎞以上であれば発生するなどと条件を設定しています。

上記の表のように、甘い考えで債務整理を行い弁護士の言うことを聞かない・支払いをしないと、辞任や一括払いの請求をされてしまうため、注意して下さい。もし、自分に非がなく一括請求・辞任された場合は、別の弁護士や日本弁護士連合会に相談して下さい。
弁護士から指示のあった書類を準備する
弁護士から指示された債務整理に関わる必要書類の準備ををする必要もあります。。表にしましたので、参考にしてください。
項目 | 詳細 | 備考 |
住民票 | 世帯全員分・本籍が記載されているもの | 本籍が記載されていることにより、戸籍謄本を提出する必要が無くなります |
1.債務に関わる書類 2.債務一覧表 |
1.借金の契約日・返済状況・完済日がわかるもの(契約書・督促状など) 2.債務者の情報をまあとめた表を作成します |
債務一覧表の作成については、借金・債務整理の弁護士・司法書士相談で準備するものを参考にして下さい |
収入に関わる書類 | 給料・賞与明細・源泉徴収票・課税(所得)証明など | 自営業の場合は、確定申告の書類が必要になります |
退職金予定額 | 会社に発行依頼をする・自分で会社の規定を元に計算する | 必ずしも、会社から発行してもらう必要はありません 弁護士に確認しましょう |
家計の状況 | 家族全員の収入や出費について直近2ケ月分 | 簡単に言えば、家計簿です |
資産(財産)に関わる書類 | 預金通帳のコピー・不動産・車両・保険証・有価証券など | 現在所有している20万円以上の価値のあるもの・解約(売却)時に20万円以上になるものも含みます |
このように借金整理(債務整理)に入る場合は、弁護士からいろいろな書類提出を求められます。このときに、「〇日まで提出してくださいね」と提出期日を指定された場合は、期日内に揃えるようにしましょう。
もし、期日を過ぎるようでしたら「期日までに提出するのが難しいです」と事前連絡を入れることをお勧めします。なぜなら、連絡も入れずに提出が遅れると弁護士との信頼関係が無くなってしまうからです。
予納金や弁護士費用の積み立てをする
自己破産や個人再生を利用すると、予納金を準備する必要があります。この予納金や弁護士費用を一括払いが出来ない方は、分割払いや数回に分けて弁護士に費用を渡し積み立てをする必要があります。

この積み立てができないと債務整理の手続きが進まない・弁護士が辞任する可能性があるため注意が必要です。毎月の積立金額については、契約時に確認しておきましょう。
弁護士からの指示を守る
弁護士に依頼したからといって安心はできません。弁護士と契約したときに作成された”委任契約書”を守る必要があるのです。
この委任契約書には、提出書類を期日内に出す・費用の準備を怠らない・連絡がつくようにしておくことなどがあります。
実際に、弁護士からの連絡を無視する・弁護士費用や予納金の準備を怠り辞任されるケースの報告もあります。
弁護士費用や債務整理手続き費用は、決して安くありません。もし弁護士に辞任されてしまったら、新しく探す時間と費用もかかてしまいます。
ですから、軽い気持ちで約束や契約内容を破らないように注意しましょう。
弁護士に辞任されると次の弁護士探しが難しくなる?
1度弁護士に辞任されてしまうと、新しい代理人探しは厳しくなります。例えば、費用の一括払いを条件にされたりと最初の契約よりも厳しい内容でしか委任契約をしてもらえなくなります。
そして、完全に依頼者側に原因のあった辞任の場合は、法テラスの弁護士(司法書士)費用の立替の利用も出来なくなってしまいます。
ですので、債務整理の手続きをスムーズに完了するために、弁護士の指示には従いましょう。基本的にはお互いビジネスであり、信頼関係で仕事が成り立つものです。
もし、弁護士が不条理な要求をする場合は日本弁護士連合会や無料相談を行っている弁護士事務所に相談をしてください。
弁護士に依頼後は散財しないように気を引き締める
債務整理の手続きを弁護士に委任したからといって、気を緩めないように注意することが重要です。「後は弁護士が解決してくれるから借金が無くなるし大丈夫」という考えで、無駄遣いをてしまう方がいらっしゃいます。
実際に弁護士に債務整理を依頼して、自分が原因で借金問題が解決しなかった例を紹介していきます。
Aさん 45歳 男性 借金500万円 資産無し
Aさんは、ギャンブル好きが原因で借金を増やしてしまいB弁護士に自己破産を依頼しました。最初の2ケ月はきちんと節約をして、弁護士費用の支払いをしていました。
ですが、3ケ月目から「少しくらいなら趣味を楽しんでも罰はあたらないだろう」と甘い気持ちで競馬を再開してしまい、熱くなり過ぎて弁護士費用の分まで使ってしまいました。そして、3回目の弁護士費用の支払いの延滞が原因でB弁護士に辞任されてしまいました。
その結果、親戚中にお金を借りて新しいC弁護士に費用を一括で支払い自己破産手続きをしました。
Eさん 23歳 女性 借金180万円 資産なし
Eさんは、服飾品の買い物好きが原因で借金を増やしてしまいF弁護士に任意整理を依頼しました。最初6ケ月は返済をしていましたが、欲しいものや節約が我慢できずに返済分のお金を使ってしまいました。
そして、2回の返済の滞納により債権者からの残債の一括払いを求められると共に、F弁護士から辞任されてしまいました。
その結果、親に全てを話して残債を借りて一括返済することになりました。

自分の甘さを捨てられないと、結果的に周りの人間に迷惑をかけることになってしまいます。そのままの考えで生活をしていると、また借金を繰り返す生活に戻ってしまうのです。
ですから、借金から永遠に解放されるためには、自分の甘さを捨てることが大切です。
今回のまとめ
借金・債務整理を弁護士に依頼した後は、必要な書類を提出期限までに準備しておく・予納金や弁護士費用の積み立てをする・弁護士の指示に従うことが重要です。弁護士の指示を守れない場合は、辞任される可能性があるため注意しましょう。
1度でも、弁護士に辞任されてしまうと新しい弁護士との委任契約が厳しくなるだけでなく、費用の立替制度の利用も出来なくなる可能性があります。

借金問題から早く解放されるためには、委任契約をした弁護士の指示を守ることが重要になります。そして、急なトラブルで指示が守れないときは早急に弁護士に連絡を入れて相談をしましょう。
本気で借金問題を解決したい姿勢を見せれば、弁護士も頑張ってくれます。”信用で結ばれる人と人の付き合い”であることを忘れないようにしてください。