
所得税や住民税を滞納していると、督促状が届き延滞税が発生します。最悪のケースでは財産の差し押さえが行われます。
目次
所得税・住民税が滞納してから財産差し押さえまでの流れ
税金の支払いは国民の義務ですので、所得税・住民税を滞納した場合は税務署がどこまでも追いかけてくるものと思ってください。
1.滞納~督促状が届く
税金には納付期限が決められていて、その期限を守らないと管轄部署から「早く支払いなさい」という趣旨で書かれた”督促状”が届きます。
税金の支払い忘れで督促状が届いた場合は、速やかに支払うようにしてください。
稀に「私はもう引っ越したから前住んでいたところの住民税は支払わなくて良いんじゃない」と考えられる人もいますが、これは間違いです。住民税は住民票登録をしている都道府県・市町村に納める必要があります。
これから書きますが、もしいつまでも支払わずに滞納させ続けると、延滞税が雪だるま式に加算されていきます。
2.延滞税が発生
納付期限までに税金を支払わないと、納付期限の次の日から延滞税が発生します。
延滞税の利率
- 期限の翌日から2カ月を経過する日まで……原則として年7.3%
- 期限の翌日から2カ月を経過した日以後……原則として年14.6%
納付期限を過ぎて2カ月までは年7.3%と比較的低い利率ですが、2か月後からは年14.6%と一気に跳ね上がります。
【例】10万円の所得税を滞納しつづけた場合
では例として、10万円の所得税を滞納し続けた場合でシミュレーションしてみましょう。
まず1年ほど所得税を滞納した場合は、延滞税3700円と大したことはありません。
2年滞納だと延滞税が12800円に跳ね上がります。
5年滞納した場合は、10万円の所得税に対して延滞税がなんと64,000円加算されます。
所得税が40万円だったら24万円以上の延滞税が加算。県民税と住民税も支払っていない場合は、延滞税だけで50万円以上になってしまうかもしれません。
このように、税金の延滞税は雪だるま式にどんどん増えていってしまいます。督促状が届いたら、なるべく早く支払うようにしましょう。税金の一部を支払えば、これから発生する延滞加算は一旦止まります。ですが、そこから決められた期限内に残りを納付しないと、延滞税加算がふたたび始まります。

国の税金の延滞税は免除する方法もないので、あなどれません。
税金支払いに時効はあるのか?
あまり知られていませんが、借金に時効があるように税金の支払いにも時効があります。
税金の支払いは5年間です。(借金は10年)
ですが、督促状が届けば時効のカウントがリセットされて、督促状に記載した日付けからまた5年のカウントが開始になる仕組みです。
残念ながら税金については、どこの部署もキッチリ年に数回督促状を送ってきますから、現実的には税金の支払いが時効になることはありません。
また、自己破産をしたとしても税金の滞納が免除されることもありませんので、支払わない限り”消すことのできない借金”として残り続けることになるのです。

サラ金や銀行からの借金は自己破産でゼロになりますが、税金の滞納分は減額したりゼロになることは絶対にありません。
3.行政処分~財産の差し押さえ
督促状が届いて1年以上所得税や住民税を滞納し続けると、行政処分を受けて財産の差し押さえに来る可能性が年々高くなります。
「何年滞納すれば財産が差し押さえられるか?」とご質問も頂くことがありますが、これは各都道府県・市町村や滞納額によっても変わります。金額が多くなって差し押さえる財産の見込みがあるほど、行政処分を受けやすくなります。
身辺調査・財産調査が入る
行政処分を受けると、行政側から身辺調査や財産調査を受けることになります。簡単に言うと、「どれだけ財産が差し押さえられるか」をチェックするためのものです。
身辺調査
- 勤務先、取引先の調査
- 所得の調査
- 家族構成
- 戸籍の調査(戸籍附票で、引っ越し履歴も調査される)
財産調査
- 給料
- 不動産謄本の入手
- 自動車の有無
- 銀行口座
- 生命保険(解約返戻金など)
- 売掛債権など

給料の差し押さえについては、自動的に給料の4分の1が毎月税金の滞納分として引き落とされたりすることになります。
差し押さえられない財産
「どんな財産が差し押さえられるか?」と聞かれますが、これはお金になりそうなものならほとんどが差し押さえられます。
ですので、”差し押さえられない財産”の方をご紹介しておきます。この表で紹介した以外の財産は差し押さえられることになります。
所得税・住民税滞納で差し押さえられない物
- 3カ月生活していく分の食糧・光熱器具・現金
- 収入を得るために必要な道具(農業のための農機具や、漁業のための船や網など)
- 衣服・家具・寝具・住宅など

財産差し押さえとはいえ、最低限の生活をするために物品や現金は残されます。
災害・病気・失業が理由の滞納の場合は免除もある
このように厳しい税金の支払いにも例外があります。それは、災害・病気・失業が理由で滞納した場合は、税務署や市役所の納税課に相談することで、支払いの猶予や減免、最高は免除もありえます。
実際に、東日本大震災で住宅や家財に損害を受けたりした人は、申請をすることで所得税の軽減や免除の措置が行われました。
【関連ページ】東日本大震災により被害を受けられた個人の方へ | 国税庁
とはいえ、税務署側に何も相談や申請をしないと、こういった軽減や免除がされませんので十分に注意してください。
税金以外の借金返済に追われている場合は債務整理の検討を
「税金の支払いは後回しでいいから、サラ金などのキャッシングローンの方を優先して返済しよう」という人もいます。
先ほども書きましたが、税金の支払い義務は仮に自己破産をしてもずっと残り続けます。
ですので、優先して支払う義務があるのは税金の方なのです。税金を支払ったことで、サラ金や銀行のキャッシング返済で首が回らないような状態であれば、弁護士や司法書士に”債務整理”を依頼することも考えてください。
例えば”任意整理”をすれば、税金以外の借金が2~3割減額して将来利息がカットできたり、”個人民事再生”をすれば財産を手放さずに借金を5分の1ほどまで減額できます。
【関連ページ】
任意整理のメリットとデメリットは?
個人再生のメリットとデメリット

債務整理をしても、法律上では「税金は他の借金より優先してしはらうべき」と定められています。
今回のまとめ
所得税や住民税を滞納し続けると、督促状が届いて年7.3%~14.6%の延滞税が加算されていきます。
災害・失業・病気が理由の場合は税金の減免や支払い猶予が認められることがありますが、それ以外の場合は仮に自己破産をしても支払い義務がなくなることはありません。
もし税金以外の借金返済で困っている場合は、弁護士や司法書士に相談して債務整理を検討してみてください。

税金はしっかり払わざるを得ません。税金以外の借金であれば、解決できる手段はいろいろあります。