債務者さんからのご質問
借金の返済ができなくなってしまったので、どうにかして自己破産以外の方法で借金整理をしたいと思っています。
ですが弁護士費用を準備できそうにないので、自分で借金整理はできないかと調べていますが、どうなんでしょうか?

任意整理と特定調停は自分でも出来ますが、貸金業者に相手にされなかったり、交渉できたとしても言いくるめられてほとんど借金を減らせなくなる可能性が高くなります。
目次
自分でできる借金整理「任意整理」と「特定調停」
借金整理には4つの方法がありますが、その中で自分ひとりで出来るものとして「任意整理」と「特定調停」があります。自己破産も場合によっては自分で出来ますが、これは後に説明します。
任意整理は貸金業者と直接交渉
まず任意整理から説明します。任意整理は、裁判所を挟まずに貸金業者に直接「借金が払えないので減らしてください」と交渉する方法です。
成功すれば、借金の元金を減らすことができますし、これから返済する分の利息をカットできます。また、裁判所が関係しないので面倒な書類審査も必要ありませんので、他の借金整理に比べると手軽な方法です。
ほとんどの貸金業者は直接交渉に応じない
ですが、ほとんどの貸金業者に任意整理の話を持ち掛けても、「弁護士を通してください」と言われるだけで、残念ながら本人直接の交渉に応じようとはしません。
これは、専門知識の少ない債務者と交渉の話し合いをしても、話が通じないことが多く、交渉自体の手間が増えてしまうからです。また、債務者によっては「200万円を30万に減らさないと絶対に払わない」など無茶苦茶な減額交渉をする人が少なくないので、借金問題を専門としている弁護士(または司法書士)に間に入ってもらって冷静な交渉をする目的もあります。

また、債務者の生活状況、収入状況、他の債務状況なども詳しい報告書を作成しつつ交渉をする必要があります。これが個人作成のものだと信頼性が薄いので、貸金業者は直接交渉に応じないようにしているのです。
特定調停は裁判所を介して貸金業者と交渉する方法
それでは次に特定調停です。特定調停は、裁判所に間に入ってもらって、貸金業者と債務者が借金の減額交渉をする方法です。”裁判所を通す任意整理”とも言い表せます。
任意整理の場合は弁護士や司法書士が代理人になって手続きができますが、特定調停では申し立てから調停まで、すべて自分一人で行う必要があります。
貸金業者は交渉の百戦錬磨のプロ
そして、交渉相手は裁判所と債務者と、数百件~数千件という交渉を経験してきた百戦錬磨の方たちです。
貸金業者は「貸したお金はなるべく多く回収したい」と思っているわけですから、特定調停でもあの手この手を使って借金の減額を抑えようとしてきます。
時には対応に当たる裁判所職員も言い負かされてしまうこともあります。
もし特定調停をして、自分が希望している借金減額ができなくても、裁判所の決定が通ってしまえば、それに従うしかありません。
債権者が調停に同意しないことも
さらに、特定調停はあくまで「調停」であって裁判ではありません。債権者が調停で同意しなければ、調停の決定事項は無効になってしまいます。
また、取り立て行為が止まるまで任意整理より時間がかかったり、その間は遅延損害金も利息も発生する、過払い金があった場合は回収できないなど、様々なデメリット面もあります。

特定調停を行う場合は、自分で法律や貸金業法について最低限の勉強をする必要があります。
任意整理だと、弁護士や司法書士が債務者の代理人になっていろんな手続きを行うことができます。
自己破産は財産が無ければ自分でもできる
では最後に自己破産についてです。
自己破産は裁判所に自己破産申し立てをして、免責が認められれば借金をゼロにすることができる手続きです。
とはいえ、自分一人で出来るのは”まったく財産が無い同時廃止の自己破産”の場合です。もう差し押さえする財産や現金が無い債務者の場合は、裁判所も「早く借金をゼロにして終わらせよう」と手続き処理が早く行われます。ですので、自分一人でも簡単に出来る借金整理です。
もし財産をいろいろと持っている場合は別です。
この場合は自己破産の中でも”管財事件”に該当します。財産のリスト、仕事先の収入状況、退職金審査、生命保険審査など、破産予定者のあらゆる財産を入念に審査されます。
そして管財人に報酬として予納金を最低20万円から50万円ほど用意する必要もあります。もし家族複数人の財産が絡んでいた場合は、誰の財産かを明確に証明する必要があります。
そして同時廃止手続きに比べると、破産決定までにかかる期間が長いと半年ほどかかります。
もし弁護士に自己破産手続きを依頼したら?
もし弁護士に自己破産手続きを依頼した場合は、同時廃止(財産がほとんど無い場合)は約28万円、管財事件は約35万円です。これとは別に、裁判所にかかる自己破産費用が予納金を合わせると5万円~50万円かかります。
自己破産にかかる裁判所・弁護士費用(2016年時点)
項目 | 金額 |
収入印紙代 | 1,500円 |
予納郵券代(切手代) | 3,000円~15,000円 |
予納金 | 同時廃止 10,000円~30,000円 |
少額管財事件 最低20万円(注1) | |
管財事件 最低50万円(注1) |
事件種別 | 東京都の相場 | 大手法律事務所 |
同時廃止の場合 | 約28万円 | 約25万円 |
管財事件の場合 | 約35万円 | 約36万円 |
法人破産の場合 | 約65万円~ | 約65万円~ |
東京と横浜では「即日免責手続き」が利用できる
また、東京と横浜の裁判所では、弁護士に自己破産を依頼することで「即日面接手続き」を利用することができます。
これは、通常は自己破産手続き開始まで1カ月ほどかかるものを、弁護士が代理人になっている場合は申し立て日に裁判官と弁護士が面接して、問題がなければその日の夕方~3日以内に破産手続き開始の決定がなされるスピーディな制度です。
つまり、自己破産決定までの期間が1カ月間は短縮されることになります。さらに、債務者本人は申し立て時に裁判所に出頭する必要もありません。(免責決定の際は出頭する必要が有ります)

即日面接手続きはまだ東京と横浜の裁判所だけの制度になっています。
自己破産の同時廃止以外は弁護士に無料相談をお願いしても良い
このように、一人で借金整理をすることが可能な制度もありますが、現実は任意整理のように難しいものもあります。
自己破産の場合は自分一人で何とかなる場合もありますが、自己破産はデメリット面も様々ありますので、あくまでも借金整理の最終手段です。
【関連ページ】自己破産をするメリットとデメリットは?
弁護士費用は分割でも支払える
弁護士費用は分割払いを対応している事務所がほとんどですので、自分でどの借金整理がベストなのか判断が付かない場合は、借金問題を専門にしている弁護士事務所に相談してみることもお勧めします。
借金問題専門の弁護士事務所であれば、今は多くの事務所で無料相談を実施しています。ここでアドバイスを受けて、ご自身の状況に合った借金整理を選択されることを検討する方法もあります。
今回のまとめ
自分でできる借金整理方法には、任意整理・特定調停・自己破産があります。
ですが、任意整理は「弁護士を通してください」と言われることが多い状況です。特定調停は全ての手続きから交渉を自分一人で行う必要があります。
自己破産については、財産が全くない同時廃止手続きの場合は比較的簡単に出来る借金整理です。
ですが自己破産は最終手段ですので、その前に他の借金整理方法を、借金問題専門の弁護士事務所に相談されることをお勧めします。

弁護士に相談することで、自分で気付いていない・知らなかった良い借金整理方法を提案してくれることもあります。