債務者さんからのご質問
マイホームを守るために個人再生(民事個人再生)を考えていますが、弁護士費用を節約したいので、自分で手続きを進めたいと思っています。
現実的に、自分で個人再生手続きをすることはできるのでしょうか?

かなりの法律的知識があれば別ですが、一般の方にはほぼ無理だと思います。裁判所側も「個人で個人再生行うことは相当難しい」と説明しています。
目次
個人再生手続きを自分ひとりで行う事はとても難しい!
個人再生を弁護士に依頼せず、ひとりで手続きすることはとても難しいです。これは債務整理専門の弁護士にとっても、大きな手間がかかる仕事です。
実際に裁判所のホームページでも、個人再生手続きについては以下のように説明されています。
一般的に,弁護士に依頼をせずに,本人で日常の仕事に従事しながら,個人再生の申立手続を遂行していくことは,実際には相当難しいと思われますので,破 産,調停,個人再生手続(「小規模個人再生手続」,「給与所得者等再生手続」のどちらを選択するか),弁護士による任意整理,のどの手続を選択するかも含めて弁護士会の相談窓口や司法書士などに相談したり,書類作成のアドバイスを求めることをお勧めします。
【引用】個人再生手続き | 裁判所HP
また、他の裁判所が用意している個人再生手続きの説明書でも、「一般の方が一人で行うことはかなり困難だといえます。」と書いています。
【出典】鹿児島裁判所の個人再生手続き
裁判所は個人再生の書類作りには一切関与しない
「分からない事があれば裁判所に聞けば書類の書き方についても教えてくれるだろう」と思われる債務者さんもいますが、実際に裁判所側は書類の作成に関してのアドバイスは一切行っていません。
裁判所側が説明してくれることは、あくまで個人再生手続き方法の手順だけです。
個人再生手続きは申立人が主役
個人再生手続きは、裁判所があれこれ口を出して進めるものではなく、申立人側が主役になって手続きを進めていきます。
つまり、個人再生手続きは申し立てから終了まで、すべて自分で進めていく必要があるのです。
【出典】鹿児島裁判所の個人再生手続き

裁判所も忙しいので、債務者にゆっくりと時間を割く暇が無いから「自分の再生のことだから自分でしっかりやってくださいね」というのが本音です。
書類の数が多く複雑で、専門用語も多数、裁判所が決めた期日までに求められた書類をミス無く全て揃える必要があります。
もし一つでも書類が期日までに揃えられないと、個人再生手続きは廃止になってしまいます。
個人再生手続きの流れ
それでは、簡単に個人再生手続きの流れを説明しておきます。
個人再生手続きの流れ
1:個人再生手続き開始の申し立て
↓
2:手続き開始決定
↓
3:債務者(申立人)が報告書を作成
↓
4:債務者の財産調査
↓
5:再生計画表の作成と提出
↓
6:再生計画の認可・再生債権の確定
↓
7:計画通り返済の開始
この流れを見て、「あれ、個人再生ってそんなに難しくなさそう」と思われ方かもいらっしゃるのではないでしょうか。
たしかに個人再生の手続きの流れは一見シンプルですが、個人再生が終了するまでは6カ月近い期間が必要になりますし、作成するべき書類も難しくて膨大な量になります。
個人再生の申し立て書類だけで約30枚ある
まず、個人再生を行うには、”個人再生の申し立て書類”を準備して、完璧に仕上げてから裁判所に提出する必要があります。この時点でも14枚の書類が必要です。
ちょっと長くなりますが、必要書類を一部貼り付けておきます。
個人再生申し立て書類一覧
いかがでしょうか。今まで貼り付けただけで14枚ですが、この2倍~3倍もの書類をミス無く作成する必要があります。
この他に、債権者一覧表・住宅資金特別条項の書類が約8枚(マイホームを守る場合に必要)、清算価値算出シート、退職金見込み額証明書、保険証書、解約返戻金証明書、車検証、車両の時価証明書、戸籍謄本、住民票などの書類を準備する必要が有ります。
そしてサラリーマンがよく申し立てる給与所得者再生の場合は、可処分所得額算出シートを作成する必要がありますが、これが難しく分かりにくいものです。
このように、裁判所に申し立てる時点だけで30枚以上の書類をミスや漏れなく準備する必要があります。

個人再生の書類準備は、債務整理専門の弁護士でも「仕事とはいえ大変」と思ってしまうものです。債務者自身が分からない情報を調べる手間もありますので、個人再生の申し立ては裁判所が言うように、一般の人が一人で出来るようなものではないと思います。
個人再生手続き中も準備書類が沢山ある
今までご紹介したものは、個人再生を申し立てる場合の書類です。個人再生手続きが開始になれば、ここからさらに追加の報告書に加えて、再生計画表と今後の家計改善の表など、沢山の書類を作成する必要が有ります。
書類の作り方を間違って提出期限を過ぎてしまえば、個人再生が認められずに自己破産に陥るパターンもあります。
このように、個人再生では書類の作り方で再生手続きの結果が大きく左右される制度になっています。
今回のまとめ
個人再生手続きを一般の人が1人で行うことは、とても困難です。
裁判所は書類の作成方法を教えてくれませんし、ミスや漏れがあったり、期限内に必要書類を完璧に仕上げて提出しないと、個人再生手続きが廃止されます。
確実に個人再生を行うには、借金問題や債務整理専門の弁護士に依頼することをお勧めします。

借金問題や債務整理専門の弁護士事務所の多くは、最初の相談料は無料でできるところが多くなっています。
弁護士に代理人になってもらえば、費用はかかりますが、確実な個人再生手続きができますし、手間が20分の1くらいに減らすことができます。