債務者さんからのご質問
個人再生後の住宅ローンの返済はどうなりますか?

個人再生では住宅ローンの減額はされません。返済は”同意不要型”と”同意型”の2パターンあります。
個人再生では住宅ローンの返済額は減らない
個人再生をすれば、消費者金融やカードローン、個人からの借金は減額できますが、住宅ローンの債権は一切減額されません。
その代わりに、住宅資金貸付債権の特則を利用して、マイホームを手放さなくて済む仕組みになっています。
【関連記事】住宅資金貸付債権(住宅ローン)の特則とは?
再生計画に盛り込む”住宅資金特別条項”
個人再生手続き中には、”再生計画表”を作成する必要があります。これは、「再生後にどうやって・どのくらい返済していくか」のスケジュール表のようなものです。
そしてもし住宅ローンを組んでいる場合は、”住宅資金特別条項”を盛り込んでおきます。
これを盛り込むと、住宅ローンの返済に関しての特別なルールを適用することができます。
【関連外部サイト】民事再生法196条
住宅資金特別条項の種類
住宅資金特別条項(個人再生後の返済に関する特別ルール)には主に4つの種類があります。
住宅資金特別条項の種類
- 期限の利益回復型(同意不要型)
- 最終弁済期延長型(同意不要型)
- 元本猶予型(同意不要型)
- 同意型
住宅資金特別条項は大別すると”同意不要型”と”同意型”の2種類に分かれています。
同意不要型には「期限の利益回復型」「最終弁済期延長型」「元本猶予型」の3つがあります。
同意不要型とは、住宅ローン債権者の同意を得る必要がなく利用できる返済方法で、「そのまま型」とも言います。つまり、個人再生手続き中に、住宅ローンをしている銀行などに何も言う必要がありません。
対して同意型は1種類のみで、債権者側に相談・交渉をして返済額の変更などについて同意を得る必要がある返済方法です。
1.期限の利益回復型(同意不要型)
最初の計画通りに、決められた住宅ローンを返済し続ける方法です。
もし滞納している住宅ローンがある場合は、これを分割返済で上乗せします。
2.最終弁済期延長型(同意不要型)
住宅ローンの返済期間を延長して、毎月の返済額を少なくする方法です。
例えば残り25年のローンがあるとすれば、30年に延長するなど、これを債権者の同意を得ずに返済計画を変更できます。別名はリスケジュールとも言います。
ただし、完済時が70歳以下という条件が付きます。
3.元本猶予型(同意不要型)
最終手段として元本猶予型があります。これは、再生計画中の元本返済を減らす方法です。
元本猶予型の具体例
分かりにくいと思うので、具体例をあげて解説しましょう。
例えば年利2%で3000万円の住宅ローンを組んでいた場合、月々の利息は5万円になります。
そして当初の契約で元本の毎月返済額が5万円の場合、毎月の住宅ローン金額は10万円です。
個人再生が認められて、住宅ローン以外の借金の毎月の返済額が4万円になったとすれば、住宅ローンと借金の返済を合わせると14万円になりますよね。結構大きな金額です。
「この返済額だと苦しい」という場合に、「じゃぁ再生期間中だけ、住宅ローンは元本の毎月返済額を1万円にして、再生計画が終わった3年後に毎月5万円に戻しましょう。そうすれば、再生期間中の住宅ローンと借金の返済額合計は月10万円に減りますよね」という方法が、元本猶予型です。
ですが、あくまで元本の返済を期間限定で猶予するだけの方法です。住宅ローンの返済額が減額されるわけではないので、注意が必要です。
4.同意型
「同意不要型では再生計画が成り立たない」ということが分かった場合、本当に最後の手段として、同意型を検討します。
これは住宅ローンの債権者に「利息を年2%から1%に減らしてもらえませんか?」「遅延損害金を免除してもらえませんか?」「返済の年齢制限70歳を超えて73歳にしてもらえませんか?」などと交渉する方法です。

弁護士の立ち合いのもと、住宅ローン会社に同意交渉をします。再生計画の作成段階で返済が苦しい場合には、この方法を取ります。
今回のまとめ
個人再生後の住宅ローン返済は、住宅資金特別条項を盛り込むことで、どんな返済をするかを決めます。
返済方法には、期限の利益回復型、最終弁済期延長型、元本猶予型、同意型の4種類があります。

住宅ローンの返済は再生計画において大事な部分ですので、借金整理・債務整理専門の弁護士とじっくり相談し合いながら決める必要があります。