
資産(財産)がどのくらいあるかで、自己破産申し立ての手続きが違ってきます。
では「資産(財産)は、どんなものが該当するのか?該当しないのか?」をご紹介していきます。
目次
自己破産手続き上で資産(財産)に該当するもの
資産(財産)になるもの
- 現金
- 預貯金
- 保険解約返戻金
- 退職金
- 自動車
- 不動産
- 評価額が20万円以上の美術品や宝飾品(絵画・陶器・宝石など)
- 有価証券
- 衣類家財道具など評価額が20万円以上になる場合
現金・預貯金
現金は資産(財産)になりますが、99万円未満は該当しません。99万円以上の部分が資産に該当します。
例えば、自己破産申し立てした時点で現金を121万円持っていた場合、22万円は資産に該当します。
預貯金の場合は、20万円を超えた分が資産になります。例えば通帳に60万円預金があった場合は、40万円が資産になります。
保険解約返戻金
各種保険を解約した場合、返戻金(戻ってくるお金)が20万円以上になる保険は資産になります。
もし複数の保険に加入している場合は、全て解約した時の合計が20万円以上になっても資産に該当します。
退職金
会社勤め・サラリーマンの場合は、自己破産申し立て時点の退職金も資産(財産)に該当します。
具体的には、現時点で退職金の予定金額の8分の1が20万円以上になる場合。
自己破産手続き開始後から処理完了までに退職した場合は、4分の1が20万円以上の場合。
20万円をこえる部分のお金が資産に該当します。
自己破産をしたからと言って今勤めている会社を必ず退職する必要はありませんが、会社側に「私がもし退職した場合の退職金を教えてもらえませんか?」と聞いて、会社側から”退職金見込み額証明書”を貰わなければいけません。
【関連ページ】退職金見込み証明書を職場から貰うのは難しいですか?
もし退職金額の8分の1が20万円以上もらえることが分かっていて会社に残り続けたい場合は、自分で退職金8分の1の現金を用意する必要があります。
ですがどうしても用意できない場合は、退職して退職金を得ることになります。

退職金見込み額証明書を会社に発行してもらう場合、「不動産を買いたいがローンを組む際に必要」が代表的な理由です。
さすがに「自己破産のため」とは言いにくいものです。
自動車
自動車は、中古買取市場の評価額が20万円以上の場合に資産(財産)に該当します。
ですが、普通自動車は新規登録が6年以上前、軽自動車は新規登録が4年以上前だと資産になりません。
ベンツなどの高級自動車の場合は、新規登録から6年以上経過していても、評価額が20万円以上であれば資産に該当します。
不動産
不動産の場合は、無料査定の結果がの金額がそのまま資産に該当します。
もし住宅ローンが残っている場合は、ローン残高が評価額より1.5倍以上のときは資産になりません。
例えば、ローンが残り2000万円の土地と家を持っていた場合、自己破産申し立て時点の評価額が1400万円だと資産に計上されますが、1300万円だった場合は資産になりません。
※(2000万÷1400万=1.428倍))
(2000万÷1300万=1.538(倍))
ポイント!
【不動産ローンの残額÷不動産の評価額=1.5倍以上だと資産にならない!】

不動産のローン残高が1.5倍以上の場合は資産とされませんが、自己破産の申し立て時の書類に、”オーバーローン上申書”を提出する必要があります。
評価額が20万円以上の美術品や宝飾品
美術品・宝飾品の評価額が20万円以上の場合は、資産に該当します。
評価額の算出は、裁判所側が用意した破産管財人・鑑定人の元で行われます。

鑑定人の絶対数が少ないので、鑑定に来るまで時間がかなりかかります。自己破産手続きが長くかかる原因の一つにもなっています。
有価証券
有価証券・株券なども全て資産に該当します。これは金額の大小に関係ありません。
衣類家財道具など評価額が20万円以上になる場合
衣類や家財道具の合計額が20万円以上になる場合も、資産に該当します。
テレビドラマなどで破産した人の家財に「差し押さえ」とシールを貼られるシーンを見たことはありませんか?これは自己破産をした場合に、破産管財人が鑑定人を連れて家財や衣類の評価をしにきて、お金になりそうな物は全て差し押さえるためなのです。
ですが身ぐるみ剥ぐまではせずに、生活に必要な最低限の下着・衣服・調理器具・生活雑貨は残します。冷蔵庫は新品で高額なものであれば差し押さえられることもあります。
自己破産手続き上で資産(財産)に該当しないもの(=自由財産)
自己破産手続きの上で資産(財産)に該当しないものを、”自由財産”といいます。この自由財産は、管破産者が管理・処分できる権利がある財産です。
資産に該当しないもの(自由財産)
- 現金:99万円まで
- 預貯金20万円まで
- 保険解約返戻金:20万円未満のもの
- 退職金:1/8が20万円以下の場合
- 自動車:評価額が20万円以下の場合
- 不動産:評価額の1.5倍以上の住宅ローンが残っているとき
- 敷金返還金:金額に関わらず資産となりません
- 衣類・家財道具など(評価額が20万円以上の場合は資産となります)
基本的には先にご紹介した「資産に該当するもの」以外ということになります。
そして自由財産は、現金その他を合計した金額が、99万円以内であることが条件となっています。
自己破産をしたときも、破産後の生活ために必要とされる資産が手元に残ります。
保険解約返戻金の注意点
生命保険の場合、契約のタイプ・契約者が誰かにによって、資産とされるか・されないか変わります。
保険解約返戻金のないタイプ
掛け捨ての保険は、資産となりません。なぜなら、解約返戻金がないからです。
保険解約返戻金があるタイプ
積立型・ボーナス型の保険には、解約返戻金があります。このタイプの場合は、解約返戻金が20万円以上の場合資産とされます。
このタイプの保険でも、契約者が破産者本人ではない・受取人が債務者である場合は、資産にならないケースがあります。
保険タイプ | 積立・ボーナス | 契約者 | 資産/自由財産 | 理由 |
解約返戻金A | 17万円 | 本人 | 自由財産 | 20万円以下のため |
解約返戻金B | 35万円 | 配偶者 | 自由財産 | 契約者が本人ではないため |
解約返戻金C | 32万円 | 本人 | 資産 | 20万円以上のため |
保険解約返戻金については、保険証書を参考にするか保険会社に問い合わせをして解約返戻金の確認をしましょう。
保険を解約したくない場合は?
破産者の年齢によっては、保険を解約して再加入すると保険料が高くなってしまいます。そのため、解約したくないという方もいらっしゃいます。
この場合は、解約返戻金と同額の現金を債権者へ分配することで、解約の回避が可能です。
例えば解約返戻金が40万円だったとしたら、40万円の現金を自力で用意します。自己破産では99万円以下の現金は自由財産として認められていますから、この中から解約返戻金と同額を支払う人もいます。
また、保険会社に解約返戻金を担保として、貸付を受けることで解約返戻金を、20万円以下にすることが出来ます。
ですが、裁判官によって貸付金の用途の説明を求められるため、最初から専門家に相談することが重要です。
財産が20万円以上ある場合は基本的に全て管財事件になる
ちょっとここで「管財事件」についておさらいしておきましょう。
自己破産の手続きには2種類あって、「同時廃止」と「管財事件手続き」があります。
同時廃止は「手元に20万円未満の現金しかなくて、財産になるようなものも全く無い」という場合に行う自己破産手続きです。裁判所側も「この人からはもう何も取れないから、免責与えて早く手続きを終わらせてしまいましょう」という意図があります。
それに対して管財事件手続きの場合、「この人はちょっとした現金や預金、財産になるようなものを持っているので、しっかり精査してから慎重に破産手続きをしましょう」という意図があります。
管財事件になったときの資産と自由財産の例
実際に、自己破産を申し立てて管財事件になったAさんの例を、ご紹介します。
Aさん 男性 50歳 借金総額 840万円
転職により収入が半分になったことを、家族に内緒にしていました。1年間は、消費者金融から借り入れをして生活をしていましたが、利息分の返済にも困ってしまい自己破産を決意しました。
項 目 | 合計金額 | 資産 | 自由財産 |
現金 | 33万円 | 0円 | 33万円 |
預貯金 | 18万円 | 0円 | 18万円 |
保険解約返戻金 | 56万円 | 36万円 | 20万円 |
普通自動車評価額 | 17万円 | 0円 | 17万円 |
不動産評価額- 住宅ローン残金 |
1000-800 =200万円 |
200万円 | 0円 |
合計 | 324万円 | 236万円 | 88万円 |
Aさんの場合は、債権の返済にあてられる資産が236万円、自由財産として認められるのは88万円となります。管財事件の場合でも、このように資産と自由財産とに分けられて、破産者の手元にお金が残るようになっています。

現金も99万円以下なら、破産者の手元に残ります。この自由財産の中から、管財事件の予納金を支払うことを覚えておきましょう。
今回のまとめ
自己破産を申し立てるときに、資産に該当するもの・されないものがあります。
資産に該当するものは、換価されて債権者に分配されます。
そして、資産に該当しないものは破産者に管理や処分する権利があります。この資産を自由資産と言います。
自己破産をすると、資産に該当するものは破産管財人により換価(現金化)されます。このとき破産管財人に非協力的だと、免責不許可事由となり免責の許可がされません。
管財人から、協力を求められたら素直に対応することが重要です。
(破産管財人=財産を調査・管理・現金化・配当する外注機関のこと)

手元に20万円未満のお金しか残っていなければ、同時廃止になって自己破産手続きによる免責がスムーズに進みますが、ちょっとしたお金や家財があるだけで基本的には手間のかかる管財事件・管財手続きになります。