債務者さんからのご質問
債務整理は相談する弁護士の先生によって結果に差が出ますか?
現在5社の消費者金融から400万円の借り入れがあります。これと別にマイカーローンの残債が80万円です。
最初に相談した弁護士の先生からは自己破産を勧められたのですが、その後別の法務事務所に相談したら個人再生を勧められました。
違う提案をされていて、どうすればいいのか分からなくなっています。

弁護士の先生によって得手不得手もありますし、考え方も違いますので、債務整理の結果に差が出ることはあります。
最終的に決めるのはご自身になります。
弁護士でも十人十色
人間がひとりひとり違うように、弁護士も十人十色です。
債務整理を専門にしている弁護士もいれば、刑事事件や離婚問題を専門にしていたりと様々です。
例えを変えて説明するなら、「演奏家」でしょうか。
「Aという演奏家は、〇〇の作曲家の曲を弾かせれば素晴らしいけど、▲▲の作曲家の曲を弾かせればイマイチ」ということがあります。
オールマイティな人はいないのですね。
弁護士もこの例えと通ずるところがあります。経験値も関係してきますから、相談・依頼する弁護士の先生によって債務整理の結果に差が出ることはもちろんあります。
3人のの弁護士の先生に債務整理相談をした例
3人の弁護士の先生に債務整理を相談された債務者さんの例をご紹介します。
借金の相談内容
- 5社の消費者金融とから500万円の借り入れとマイカーローン残金80万円(毎月約12万円の返済)毎月の収入は手取り19万円
- 借金の理由は主にギャンブル
- ボーナスは毎年バラつきがあり、1回の手取り10万円~20万の6月・12月支給
- 家賃5万円
- 家族無し
- 貯蓄はボーナス分を都度貯めて毎月の返済に充てている
- 財産は車だが生活に必須ではない(ローン支払い中)
弁護士の先生は、それぞれA・B・Cの3名です。
相談した結果、以下のような結果でした。
A弁護士・・・個人再生
この返済状況と債務総額や収入から判断すれば、自己破産をした方が良いと思われますが、借金をした理由がギャンブルであることが引っかかります。
大部分の借金の理由がギャンブルだと、自己破産の免責不許可に該当しますので、免責を受けられません。裁量免責で免責が与えられる可能性は高いのですが、あくまで可能性が高いというだけであって、免責が与えられないケースもあります。
ですので、安全策としては個人再生をお勧めします。
個人再生をすれば、合計580万円の借金は120万円前後に減額されるでしょうから、3年間毎月4万円ほどの返済で済みます。
車はローン会社に引き揚げられてしまいますが、必要であれば個人再生後に貯金をして購入することになるでしょう。
個人再生すると、7年間はローンが組めなくなりますのでその点はご注意ください。
B弁護士・・・自己破産
残り返済期間が60カ月(5年間)であることを考えると、生活を切り詰めて返済を続けるギリギリの状況が長く続く可能性は低いと思われます。
もし仮に、会社のボーナスが1度カットになってしまえば、返済が滞納してしまうような状況に置かれていますので、自己破産をお勧めします。
借金の理由がギャンブルだと、自己破産の免責不許可事由に該当してしまいますが、裁量免責が与えられて自己破産は成功するでしょう。
車は失ってしまいますが、借金がゼロになります。会社をクビになったりお住まいを退去させれることもありません。
自己破産をすれば7年~10年間は新しいローンを組めなくなってしまいますが、もしどうしても車が必要であれば、給料を貯金して一括購入する方が健全かと思われます。
借金の返済が無くなった分、100万円前後の車であれば、自己破産後に1~2年頑張って貯金をすれば購入できるのではないでしょうか。
C弁護士・・・自己破産
これはもう自己破産しかないでしょう。
無理な返済生活は続かなくて、返済が滞ればさらに借金が膨れ上がって取り立てをされて疲れてしまいます。
ギャンブルが借金の理由でも、自己破産で免責許可はおそらく得られるでしょう。
個人再生という方法もありますが、当事務所では受けていないので、もしこちらの手続きが良い場合は別の法務事務所をご紹介します。
【考察】どの弁護士の提案を受け入れるか?
3名の弁護士の先生の意見をご紹介しました。それぞれ違う提案をされましたよね。少し考察してみましょう。
C弁護士の提案について考察
個人再生を受けていないということ、説明でも一方的に「自己破産しかない」と決めて意見を述べていることから、おそらく債務整理は得意ではないと思われます。
債務整理の依頼は避けた方が良いように思います。
B弁護士の提案について考察
「ギャンブルが借金の理由でも自己破産で免責が得られる」は間違いではありません。確かに自己破産申し立ての9割は免責が得られていますし、ギャンブルが借金の理由でも免責が得られている事例は沢山あります。
ですが、これはあくまで可能性の問題です。
裁判官が違えば判決の結果も変わる事がありますし、審査の方法も裁判所によって少しずつ異なります。
借金がゼロになるというのは魅力的に感じますが、もし免責の許可が得られなかったら弁護士費用だけかかってしまって、さらに個人再生手続きをし直す必要があります。
こうなった場合、おそらく弁護士費用だけで50万円以上かかるでしょう。
こういったリスクを説明しないことから、提案をすんなり受けることは避けるべきだと思います。
A弁護士の提案について考察
自己破産で免責不許可になるリスクを踏まえた上での安全策を提案しています。
基本的に自己破産は最終手段で、債務整理相談では任意整理→個人再生→自己破産の順に検討していきます。
また、「安全策として個人再生をお勧めする」と言っていますので、債務者さん本人の意思があれば自己破産で申し立てることも可能でしょう。

私であれば、A弁護士とじっくり相談をして債務整理を依頼すると思います。
弁護士によって債務整理の結果に差が出るか?について
本題である「弁護士によって債務整理の結果に差が出るか?」ですが、債務整理の方法が4種類しかありませんので、結果についてそれほど大きな差が出るか?というと難しいところです。
結果だけを見れば差は小さいようにも思いますが、債務整理の相談をしている段階では、未来がどうなるかは誰にも分からないですよね。
ですので、「結果による差は小さいですが、結果に至るまでの過程には大きな差がある」と私は思っています。
相談中はいろいろ不安でしょう。「こういう債務整理をするとこうなります」「この債務整理にはこういうリスクがあります」「この生活状況であれば、出費を少し節約すれば別の手があります」など、相談者さんのことをじっくり聞いてくれて、じっくり説明してくれて、納得してからどの債務整理でいくかを決めるという過程が大事なのではないかと思います。

基本的に、一方的に話をする弁護士の先生、話を聞かない弁護士の先生への依頼は避けた方が良いと思います。