
自己破産免責が許可されなかったら、免責が受けられないため借金が残ります。
免責不許可の決定がされたら、破産者のまま10年間過ごす・即時抗告を申し立てる・個人再生や任意整理の手続きをするなど、借金を減らす方法があります。
目次
免責の許可がされなかったら、裁量免責が考慮される
破産者に免責不許可事由がある場合、免責審尋が行われます。そこで、裁判官が免責をあたえてもいいと判断した場合に、”裁量免責”を与えて、免責許可を出すこともあります。
免責が不許可になりやすい理由
免責不許可になる事由(理由)の例を挙げておきます。
免責不許可事由になる理由
- お金を貸した人に配当する財産を隠す・消失させた・又貸した
- 自己破産手続き中に消費者金融からお金を借りた
- 自己破産手続き中にクレジットカードで買い物をして換金した
- 身の丈に合っていない浪費をしている
- ギャンブルに大金をつぎ込んだ
- 株・FX・為替・先物取引で大きく失敗して負債を抱えた
- 決算書の偽造をした
- 脅迫・暴行をした
- 破産管財人の職務を妨害した・協力しなかった
- 前回の破産免責許可決定から7年以上経過していない
- 債権者集会で破産の理由を明確に説明しなかった
- 破産申し立て時に財産一覧の書類を提出しなかった

ギャンブルや株取引関係で借金を抱えてしまった場合は、裁量免責は認められやすいです。
実際には9割以上の自己破産案件で免責は認められています。
免責不許可になったらどうする?
もし裁量免責も出ずに免責が不許可になっても、次の手はあります。
もし自己破産をしても免責不許可になったら
- 何もせず破産者として過ごす(借金の請求時効を待つ)
- 即時抗告の申し立てをする
- 個人再生の申し立てをする
- 任意整理の手続きをする
このように、免責不許可になった場合は、借金はゼロには出来ませんが、個人再生や任意整理で借金を減らす方法もあります。
免責不許可になる可能性は低いのですが、もし免責不許可になったときのために、覚えておきましょう。
1.破産者として10年間過ごす
- 5年~10年間破産者として借金を一切返さない
- 資格の制限がある場合は、10年間その職に就けません(10年後には、復権されます)
- 債権の支払い義務が残る(借金の請求時効は5年間です)
免責不許可が出ると、債権者は「破産した人から借金の回収は難しい」と判断して、取り立てを止める債権者もいます。
ですが、借金の取り立てを諦めない債権者に対して、返済を続けていくか、返済を一切しない選択をします。
5年間のあいだに1度も返済をしなければ、消費者金融や銀行からの借金は消滅時効を迎えます。
つまり、免責不許可になって借金が残ったとしても、5年後には借金の支払い義務は無くなるのです。
ですが、1度でも、1円でも返済をしてしまった場合は、消滅時効のカウントがリセットされてしまいます。
【関連ページ】借金の時効は?
また、資格の制限を受ける職業に就いていた場合、10年間はその資格を用いた仕事をすることができません。職種については、「自己破産手続き中に制限を受ける職業資格は何がありますか?」のページをご参考ください。

借金の請求時効は、ローンの場合は5年・個人間の場合は10年とされています。
2.免責不許可の決定に対する即時抗告を申し立てをする
高等裁判所に免責不許可の即時抗告の申し立てをします。
即時抗告とは、裁判で言えば「控訴」に近い意味で、「この決定は不服です!もっと上の方にしっかり審査してもらいたいです!」と再び審査依頼をすることです。
この手続きは、裁判所から免責不許可の書類を受け取った日から、1週間以内に申し立てる必要があります。
ですが、この抗告で免責許可が出る可能性は少ないので、あまりお勧めできません。
免責不許可即時抗告の申し立て手続き
- 申立先:自己破産申し立てをした裁判所の管轄の高等裁判所
- 申立手数料:1,000円程度
- 申立書:即時抗告申立書 1通
- 免責不許可の通知書 1通
【外部関連サイト】即時抗告申立書サンプル | 裁判所ホームページ
この即時抗告の申立手数料が安いため、無理を承知の上で即時抗告申立をする方もいます。
3.個人再生手続きの申し立てをする
個人再生手続きの申し立てをして、債務の減額をします。
この申し立てのメリットは、借金を5分の1から10分の1まで減らせること、マーホームなどの不動産を手放さずに済むことです。
手続きにかかる費用は、27~50万円程度となります。
ですが個人再生は定期的な安定した収入が無いと出来ません。ですから、無収入の方は利用できないため、注意しましょう。
【関連ページ】
個人再生の目的と手続きの流れ
個人再生のメリットとデメリット

個人再生は手続きが難しい方法ですので、裁判所側も弁護士への依頼を推奨しています。
4.任意整理をする
任意整理は、債権者と弁護士や司法書士が直接交渉して、利息のカットや元金の減額を求める債務整理方法です。
ですが、個人で行うことが難しいため、専門家に依頼することが必要です。
この手続きは、収入がある程度あり返済期間を延長したり、利息分を除けば返済が可能な方に向いています。
この任意整理のメリットは、債務者が減らしたい債権者を選べる・将来分の利息の減額やカット・返済期間の延長が可能なことです。
また、複数ある債権者の内で債権額の多い2社だけを、任意整理することも出来ます。
【関連ページ】任意整理のメリットとデメリットは?

過払い金請求なども任意整理に該当します。消費者金融からの借金で困っている場合は、自己破産よりも任意整理を検討してみてください。
任意整理の弁護士費用は、1社あたり3~5万円に減額分の10%程度を足した金額です。
自己破産免責決定をもらうために覚えておこう
ポイント
- 免責不許可事由に自分が該当する場合は、事前に弁護士に相談または依頼する
- 提出書類に虚偽の内容を書かない(例:ギャンブルに使うために借金をしたのに、療養中の親戚にお金を貸したと嘘を書くことは、止めましょう)
- 故意に債権者や資産を隠さない(発覚してしまうと、裁判官に「この申立人は他にも何か隠しているのかもしれない」と不信感を持たれます)
自己破産申し立てを個人で行うためには、申し立て前に債務整理の勉強をする必要があります。
ですが、間違った知識を持って手続きをしたり、裁判官の審尋で説明を間違ったりしてしまうと、裁量免責がもらえずに免責不許可になることもあります。
実際に個人で自己破産をしようとして、間違った知識と方法で手続きをしたために、免責不許可になったケースもあります。1度免責不許可の決定が出てしまうと、覆す(くつがえす)ことは出来ません。
ですので、なるべく弁護士に依頼した方が間違いも無く、免責許可を得られる可能性が高くなるのです。
今回のまとめ
自己破産免責が許可されなくても、裁量免責によって免責が受けられる可能性があります。
ですが、裁量免責が受けられなかったときでも、破産者として過ごす以外に、免責不許可の即時抗告を申し立てる・個人再生や任意整理を行うことが出来ます。
自己破産を申し立てる前に、無料相談で専門家に自分は免責不許可事由にあたることがないか、確認することをお勧めします。

自己破産を申し立てる前に、自分に合った借金整理方法が他にないか、債務整理専門の弁護士に相談されることもお勧めします。